表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
467/1533

ハッカー殲滅作戦(百二)

 自宅に、ましてや京子に、何か異変が起きていることを、本部長ペンギンは直ぐに理解した。

 京子が迎えに来ないからだ。門扉の呼び出し音や、玄関の呼び出し音がなくても、ガレージのシャッターが上がる音で判る筈だ。


 本部長ペンギンは、高田部長イーグルが察した通り、既に憤慨していた。怒りが最高潮に達している。


 京子は気の小さい女だ。『北海道の戦線に送られる』と判っただけで泣き崩れ、大変だった。

 そんなだから『行方不明』の知らせを受けたときなんて『泣いて暴れて大変だった』と、聞いている。

 本人の口から直接聞いたことはないが。高田夫人によると、それはもう大変だったそうな。

 それで理解したのだ。京子が『前からしか出来ない体』に、なってしまったことを。


 判る。一緒に居て『オナラをする時だってそっとトイレに行く』と言うのに、目の前で『恐怖で失禁』なんて事態になったら、自ら命を絶とうとしても、おかしくはない。


 こめかみに銃なんてくっ付けていたら。そんな奴は絶対にぶっ殺す。覚悟しろ。全員皆殺しだ。


 本部長はガレージに転がっている『スパナの類』には目もくれず、ガレージから直接家に上がり込む『隠し扉』に手を掛ける。


 リビングでは『丸腰の軍人』が、緊張して立っていた。

 ガレージのシャッター音がした瞬間、人質の京子が『ムームー』言い出したからだ。


「大人しくしていろっ」

 こめかみに銃をグリグリすると、京子は直ぐに大人しくなった。物分かりが良いと思って顔を覗き込むと、何だぁ?

 白目になって、ぐったりとしているではないか。


「おいおいぃ」

 この人質、チョロすぎないか? 口をへの字にして肩を竦める。


 この『ペンギン作戦』に参加したのは、全部で八名。いずれも柔道や空手の有段者で、腕に覚えのある者ばかりだ。

 銃を持っているのは人質の京子を抑える一名のみ。七名に守られていて、簡単には近付けない位置にいる。


 作戦の概要は以下の通り。

 まず、状況を理解させて、隊長が『人質解放の条件』を話す。

 次に、一名が案内役となり、大人しく車に乗ってもらう。

 そして、めでたく『檻の中に入った』と連絡が来たら、人質を解放する。それだけだ。

 これなら誰も傷つかず、ペンギンを確保できる筈だ。

 それに、いくら『銃器の達人』『武器の達人』であったとしてもだ、何も持っていなければ、奪いようがない。完璧。


 突然、壁に寄り掛かっていた隊員の一人が、壁ごと後ろに倒れて行く。姿勢を戻そうと腕を振った所に、後ろからニュッと太い腕が伸びて来る。そして、シュっと暗がりに引き込まれて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ