ハッカー殲滅作戦(百一)ペンギンの拉致り方
高田部長がスッキリした顔で司令官席に戻る。
すると、また『見慣れぬアラート』が表示された。しかし、今度は高田部長の手が動かない。
むしろ、眉をひそめて『あり得ない』と思っていたのだ。
「何だ? 故障かぁ?」『故障ではありません』
独り言にさえミントちゃんが反応したのに、それでも高田部長は首を捻っている。
「じゃぁ何? 『アラート祭』なの?」
今度はミントちゃんからの返事がない。どうやら今のワードは『不謹慎』と認識され、スルーされてしまったようだ。
「えっ『事実』なの? マジで?」『はい。事実です』
それを聞いても、高田部長の手は動かない。
ただ思うだけだ。今日は厄日だと。
選りによって、一番めんどくさいことが起きた。
超超超超馬鹿が、本部長の家に押し入ったのだ。頭痛が痛い。自殺しに行ったとしか思えない。
まさか、妻・京子を『人質』に取ったりは? しないよね?
高田部長は平和主義者だ。平和を愛し、麻雀だって、平和を狙う。それに、争いを好まない。言い争いも含めてだ。
だから、いつでも『問答無用』で、落とし穴に嵌めるだけ。
それに比べて本部長と来たら。思い出しただけでも身の毛がよだつ。
大切な者を守る為なら、手段を選ばない。例え銃で撃たれようとも、突進して行くよ? もう、血の雨、血の川、血の海だよ?
あぁあ。後始末、気持ち悪くて大変なんですけど。
折角、台所掃除したのに。あっ、それは牧夫呼ぶか。特別賞与、まだあったし。
「どうしたんですか?」
異変に気が付いた牧夫が司令官席にやって来た。
「ん? あぁ、ちょっとな」
高田部長は、キーボードをちゃちゃっと操作して、画面を切り替えた。すると案の定、馬鹿共が京子を人質にして、リビングにたむろしているではないか。
「たぁいへんじゃない(パァン!)いてっ」
「馬鹿! でかい声出すなっ」
再び張り扇の登場だ。このままだと牧夫になってしまうと危機感を覚えたのか、一旦頭を掻いて大人しくなる。
「大変だよ。掃除がぁ」「そっちなんですかぁ?」
人の家をカメラで覗いている方が『大変』なのかもしれないが、そんな『感覚』は持ち合わせていないらしい。
カチカチとスイッチングして、カメラのアングルを切り替える。すると、ガレージのシャッターが開き出した。本部長のご帰宅のようだ。その様子が映し出されると、高田部長は頭を抱えて、机上に突っ伏してしまったではないか。
「うそぉん。すげぇ『ご機嫌斜め』じゃん。終わったなっ」




