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ハッカー殲滅作戦(九十七)

 派遣された部隊の内、階段で上がって来た隊員が『イーグル』の家の前に到着し、ていない。あれ?


「おい、松下と田中はどうした?」「後ろに。あれっ?」

 最後の扉の前に到着した男が振り返る。しかし、そこに二人の姿は見えない。首を傾げたって、判る筈もない。

 まさかトイレ? そんな筈はない。これは、かなり警戒しなければならない。隊長の金田は眉をひそめた。

「エレベータの二人は? まだ来ないのか?」

 全員が顔を見合わせて、首を傾げている。

「無線で呼び掛けて見ろっ」「はいっ」

 直ぐに無線機をカチャカチャし始めたが、通じる訳はない。そもそも館内は、物理的に無線封鎖されているのだ。


「通じません!」「そうかっ。警戒して行くぞっ」「はっ」

 そう言った所で、作戦が変わる訳ではない。玄関からの組と、隣のビルから屋上に到達した部隊が、一斉に突入するのだ。

 予定ではそろそろ、屋上から連絡があっても良い頃だ。


 確かにそのとき、屋上には二人の隊員が降り立っていた。

 ハンドサインで『ココにロープを結ぼう』と指さしたのは『消防用』の銘板が付いたステンレス製の柵だ。

 それを、手と足で動かしてみる。当然動かない。ロープを結ぶのにうってつけだ。

 二人はそこにロープを結び『確かに大丈夫』と確認をする。そして屋上の淵に行く。覗き込んで下を指さす。


『ココだな』『あぁそうだ』

 見えた景色は写真で覚えた通りだ。イーグルの部屋の真上である。間違いない。そこで一人が時計を見る。もう一人は無線で連絡。


『無線連絡は?』『ダメだ。応答がない』

 顔を見合わせて、二人は首を傾げる。しかし待てない。

 屋上とは言え、こんな街中で軍服を来た軍人がウロウロしていては、市民からの通報で、作戦に支障が出兼ねない。

 まぁ、みんな『ハーフボックス』を使っているから、人通りは極端に少ないのであるが。まぁ、念のためだ。


『そろそろ時間だ』『OK』

 無線連絡が取れなくても、それで作戦が中止になることはない。

 示し合わせて二人は、屋上の淵で下界を背にして立つ。そして、体重をロープに乗せた。

 頷き合ってタイミングを計る。そして、二人同時に屋上を蹴り出し、マンションから離れた。

 そのまま庇を回り込み、振り子のように自分の体重で再びマンションに近付くと、窓ガラスを割って侵入する、というはずだった。

 二人は目を疑う。あれだけ確認していたロープが、急に外れたのだ。しかも、二本同時に。これは事故ではない。明らかな作為だ。


『罠には、くれぐれも気を付けるように』

 二人が今になって思い出したのは、作戦会議での注意事項だった。しかし、もう遅い。手遅れだ。

 二人は『うわぁ』くらい叫んだかもしれないが、それは直ぐに、マンション前に生い茂る木々に落下する音で掻き消される。

 そのまま上戸のような形状を転がり落ちて行き、暗闇にスポンと吸い込まれて消えて行く。それに気が付いた者は、誰もいなかった。

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