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ハッカー殲滅作戦(八十七)

 DB2はこの後、左に曲がって外堀通りに行きたい。

 しかし、それは叶いそうにない。一本向うを、もう一台の車が並走しているのが見える。だからこのまま左に曲がれば、確実に前を押さえられ、後ろから来た車に挟まれてしまう。

 それは挟撃。最悪の事態だ。苦い思い出が脳裏をよぎる。


「ちっ。仕方ない」

 急がば回れとも言うではないか。そう自分に言い聞かせ、本部長ペンギンは遺憾にも右にハンドルを切る。

 銀座の裏通りは碁盤の目。三回右に曲がれば元通りだ。このまま逃げ切ってやるっ。頭の中には詳細な『地図』があるのだ。

 すぐ後ろに来ていた車、高輪班の三号車だ。車体を揺らしながら付いて来る。流れた後輪が空回りして、埃を巻き上げた。

 その様子をDB2のバックミラーで捉える。


「慣れてやがるな。これでどうだっ」

 気合一発。もう一度右。後輪が流れて行く。それは問題ない。正確には、流れているのではない。流しているのだ。

 本部長ペンギンは思わず『ニヤッ』と笑ってしまった。


 何故か可笑しくて仕方がない。今と『似たような経験』がある。

 それは、北海道の戦場をジープで逃げ回った記憶だ。

 あの時は銃弾の雨の中、道はないし、防弾フードもないし、攻撃手段もないし、敵はもっと多かった。それに比べれば、どうだ?


「楽勝じゃねぇか。なぁ」

 助手席で鉄兜を押さえ『ギャーギャー』喚いていた『イーグル』はいない。しかしその姿を思い出し、つい話しかけてしまった。

 おいおい。こいつは『ジープ』じゃない。『アストンマーチン・DB2』だぜ? それに助手席は『京子専用』なんだぜ?


 改めて本部長ペンギンは『緊急用エマージェンシーボタン』を押す。すると『ウィーン』と音がして、ダッシュボードに『テンキー』が現れた。そしてバックミラーで後ろとの距離を測る。


ロクハチフタマル

 言い方まで軍隊調になっていた。躊躇なく実行ボタンを押す。

 しかし、DB2に何も変化はない。少し速くなったのは、単にアクセルを踏んだからだ。


 それでもそのとき、確かに『仕掛け』が動き出していた。

 その様子を観察できたのは、すぐ後ろを走っていた高輪班三号車ではなく、一本違う道を並走していた赤坂班三号車の方だったのだ。


『パンッパンッパンッパンッパンッパンッ』

「おい、何の音だ?」「判らん。何か破裂したか?」「いやぁ?」

 キョロキョロしたが判らない。前の二人がしかめっ面を見合わせた。嫌な予感しかしない。すると、助手席の男が叫ぶ。

「あそこっ! えぇっ?」

 高輪班三号車に照らされた所を指さした。

「おいおい。マジかよぉ。停まれぇぇぇぇぇっ!」

 警告は届かない。古いビルが崩れて行く。直後、高輪班三号車の明かりが消えて真暗になった。暗闇に砂埃だけが舞っている。

「ど、どうする? なぁ、どうする?」

「どうするって、言ったって。お前ぇ。むしろ、どうする?」

 あと『何カ所』仕掛けられているのか? それは考えたくない。

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