チャーミンング・スター(二)
「何だ? チャーミング・スターか?」
「ああ、これはちょっと大きいぞ」
そう言いながら狩谷は、ディスプレイの一ヵ所を指差して大きく回した。
そこには『現場のアイドル』である、楯川鈴並に大きなホクロが、いや、黒い警告マークがあった。
「鈴ちゃん並だな」
「そうだな」
二人もそう思ったようだ。それは無理も無い。
何故なら二人の目の前に、当の本人が居たからだ。
「何がよ?」
楯川は、また二人が『胸の話』をしているのかと思って、少々うんざりしながら机の反対側へやってきた。
「結構でかいな」
「いつの間にか成長したんだ?」
「それより、警告は出たのか?」
二人がまだ胸の話をしていると思って、楯川は声を荒げて言う。
「何の警告よ」
彼女の胸は、いわゆる『ダイナマイトクラス』に分類されるのだが、それで警察の爆弾処理班から警告を受けたことはない。
それに昔からであり、昨日今日デビューした『新米の爆弾師』とも違う。
何よりも彼女は、ダイナマイトの扱いに精通していたからだ。
「鈴ちゃんも見てよ」
眉を顰めてディスプレイを見た楯川だが、『胸の話』ではないと判って安堵した顔になる。
そして、それが示す危機的な状態を理解し、更にそれが『チャーミング・スター』とも言われるホクロの話であることに気が付く。
そして、再び眉をひそめる。
「かなり大きいわね」
セリフだけでなく声も大きかったので、周りが一斉に反応した。
皆、楯川が認める『かなり大きい』ものが何なのか。興味が沸いたのだ。
その中で素早い行動取った三人。弓原・狩谷・楯川らの若手よりは年上の『主任クラス』だ。
「でかいのか?」
そう言いながら近づいてきたのは知坂である。四角い顔に四角い眼鏡がトレードマークの、四角い性格の持ち主だ。
「でかいの?」
次に現れたのは小夜。名前の通り小さい体で夜の様に暗い性格。甲高く小さい声。激しいのは突っ込みだけである。
三人目の丸山は、その巨体を机と棚の間に引っ掛けてしまい、未だ五人が集るディスプレイの前に集れないでいた。
「俺よりでかいの?」
しゃがれた声で発言したセリフを、一応収録しておくが、五人には届いていないので、これについて説明や描写はない。
あえて言えば、画面の隅で引っ掛かってバタバタしている姿を想像してもらえば良い。それが丸山だ。
「警告を出そう」
知坂と小夜の判断は早かった。
それは五人が見ている前では、更にドット一つ分だけ大きくなったチャーミング・スターに過ぎない。
それが実際には、更に二五〇メートル成長した積乱雲である。
もう『チャーミング』とは言い難い大きさへと、成長して行くのは必至だった。




