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ハッカー殲滅作戦(七十五)

 黒田が言っていた『大佐』なる人物について、黒沢は何も聞いていなかった。言われて見て黒沢は、初めて気が付く。準備不足だ。


「判らないな」「そうですかぁ」

 そもそも『大佐』とは、一体『誰』なのか。名前は?

 しかし、残念そうにしている本部長ペンギンの顔を見ると、どうやら面識があるようだ。


「私は『上官』から指示を受けただけだからなっ」

 イライラした素振りで『仕事が溜まっているのに来た』感を出す。

「おや。そうでしたか。なるほどなるほど」

 眉をひそめて本部長ペンギンが頷いた。

 黒沢は『早く向うへ行ってくれ』と思うが、それを表にはしない。


「『上官』とは『どちら様』ですか?」

 本部長ペンギンからの更問いに、黒松は縮み上がる。もうダメかもしれない。


 しかし黒沢は、渋い顔をしているだけで、別に縮みあがってはいなかった。

 台本では『軍の監査部から来た』ということになっていたのが、そこに『上官の名前』までは、記載されていなかった。

 だから何て答えようかと、困っているだけだ。


「何で知りたいのかね?」

 更問いには更問いで返す。これ、困ったときのテクニック。すると本部長ペンギンは両手を前に出して『揉み手』を始めると、ニッコリ笑顔のまま答える。


「今度『ご挨拶』に伺わないと、いけないかなぁと思いまして」

 可愛く腰から上を横に傾けて『思い付いちゃった』アピールだ。

「そう言うのは不要だから。むしろダメ」

 理由が判ったのを良いことに、黒沢は語気を強めた。

「そうですか。しかし『商品説明』とか」

 それでもまだ粘って来る。これが『武器商人としての顔』か。


「あぁっ。いいかね? うちは『監査部』なんだからね?」

 黒沢は椅子から立ち上がる素振りだけ見せて、グッと睨み付けた。すると本部長ペンギンは、口をちょっと尖らせてお辞儀をすると、今度こそ行ってしまった。


 黒沢も前を向いた。小さく深呼吸。『やっと煩いのが行った。邪魔すんな』感を出してチラっと見る。良し良し。


「何とかなったな」

 小さく言って黒松の方を見ると、何だ? 唇を震わせながらガタガタ震えているではないか。呆れた。どんだけ気が小さいんだ。

 黒沢は大きなため息をして、黒松を叱りつける。


「トイレでも行って、顔洗って来なっ」

 パッと『来賓用お手洗い』と書かれた案内表示を指さした。

「いっ、行ってきますっ」

 頷いて黒松が席を立つ。あれ? 本当に行きたかっただけ?

「直ぐ戻って来るんだよっ。まったく。だらしないっ」


 配役を間違えてしまったのだろうか。黒沢は頭が痛くなった。

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