表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
437/1539

ハッカー殲滅作戦(七十二)

「良し。一旦スタート位置に戻って充電だ」

 作戦本部からの指示が飛ぶ。富士演習場に造ったバラック街、東京アンダーグラウンドで実施される掃討作戦の練習場だ。

 そこに展開していたミントちゃん各機が、次々と撤収し始める。

 ある機はバラックの窓から外に飛び出して。またある機は、放置された廃車の窓から飛び出して来た。


 ミントちゃん同士が互いに連絡を取り合い、お互いの位置を把握している。だから、窓の外には警戒役であり、命令と座標を伝えるのも兼ねて僚機がホバリングしているのだ。

 窓から飛び出して来た僚機と、仲良く一緒に飛び上がる様は、さながら仲間を思いやる『連携の取れた一部隊』に、見えなくもない。


 大通りは、たちまちミントちゃんで溢れかえる。

 訓練だから、損失はゼロ。例え違う部隊であっても、そこは仲間同士。一定の距離を測りつつぶつからないように、母艦となるイチゴちゃんに戻って行く。


「無線の調子はどうだ?」

 そう。無線は重要だ。アンダーグラウンドでは、携帯の電波も入らない。そういう意味で外部からの『電波干渉』はないのだが、言わば狭い空間であり、無線が飛ぶ範囲は限られる。


「ちょっと、一定間隔で干渉波があります」「何だって?」

 無線の状態を監視している隊員が、レーダーの波形を指さした。それを上官が覗き込む。

「あぁ、それは大丈夫だ」

 すわ一大事と、真剣な顔をしていた上官の顔が緩む。

「そうなんですか?」「あぁ」

 上官が笑顔で上を指す。隊員は釣られて上を見た。今日は曇りだ。

「曇りだから、ですか?」「プッ」

 今度は上官の顔を見て聞く。すると上官が噴き出した。


「違うよ。富士山レーダーだよ。気象レーダーも同じバンドなんだ」

 手をパッと振り否定すると、富士山の方を指さした。一定の間隔なのは、アンテナがクルクル回っているからだろう。


「なるほどぉ。そうなんですねぇ」

 納得して隊員も頷いた。二人は九州からの応援部隊で、富士山を眺めるのが楽しみだったのであるが、今日は残念だ。

「あぁ。それが、何か問題か? 通信に影響が?」

 落ち着いた感じで再確認する。そう。問題がある筈はない。

 何故なら、そこからでも美しく隊列を組んだ『ミントちゃん編隊』の雄姿を、確認できているからだ。


「いいえ。問題ありません。全然大丈夫です」

 隊員の顔がパッと笑顔になった。むしろ苦笑いだ。

「まぁ、そうだよなぁ。見えるもんなぁ。はははっ」

 隊員の笑顔を見て、上官も同じように笑い出した。


「これじゃぁ、監視役は『役立たず』と言われても仕方ないです」

「だよなぁ。やっぱり夜にならないとなぁ。本領発揮できないなぁ」

 二人を顔を見合わせて、呑気に遠くを見た。風は相変わらずだ。


 これだったら、富士山が見える温泉にでも入って、のんびりしていた方が良い。風呂上がりの牛乳は、さぞや美味かろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ