ハッカー殲滅作戦(六十三)
四人はガレージにやって来た。そこには確かに大量のガラクタが積み上がっている。
一体、車一台を整備するのに、何をそんなに加工したのだろうか。牧夫は『T型フォード』のメンテナンスをしていたので、車の整備について『それなりに判るつもり』である。
そこで、目に付いた部品。ひょいと手にしたのだが、一体何の部品なのか? その他の部品だって判らないものだらけだ。
「レストアする様子をね、撮影しておいたのよ」
京子が嬉しそうに言う。それを聞いた牧夫は部品を元に戻すと、苦笑いで京子の方を見た。
「凄く地味なのに、良く撮影されましたねぇ」
「そう? 結構面白かったわよ?」
本部長は、なんやかんやと『ブツブツ』言いながら、楽しそうに修理をするタイプだった。
京子の笑顔を見て、牧夫は目を丸くした。可南子にそういう趣味はない。
「編集して動画サイトに載せたらね、六十万回再生になって!」
綻んだ口元を両手で押さえて笑っている。どうやら収益でウハウハのようだ。牧夫は再び目を丸くした。京子と同年代でそんなことをしている人は少ないだろう。
「それは凄いですねぇ」
「えぇ。主人には内緒なのっ」
そう言って京子は、口元に人差し指を当てると、片目を瞑った。その笑顔で、本部長を翻弄したに違いない。
アストンマーチン・DB2のエンジンが始動した。窓を開けて本部長が京子に手を振る。京子がそこに駆け寄った。
「じゃぁ、行って来るよ」「はい。気を付けて行ってらっしゃい」
いつもの挨拶だ。そこは可南子も一緒だ。
ガレージの外では高田部長の愛車『丸目四灯』がエンジンを始動して待機中だ。窓を開けて叫ぶ。
「牧夫、早く乗れ! 置いて行くぞ!」
来いと手を振ってから、助手席を指さした。牧夫は苦笑いだ。手を口に添えて、大声で叫ぶ。
「出来れば、置いて行って頂いた方がぁ」
来るときに乗せて貰ったのだが、相当運転が荒いのだ。
「あら、それじゃぁ『洗い物』お願いしようかしら?」
京子が手を顎に当て、すかさず口を挟む。『クククッ』と笑っている。本気だ。牧夫は慌て始めた。
「奥さん、何か食べっぱなしですいませんでしたぁ。コイツ、置いて行くんで、皿洗いでも何でも、こき使って下さいっ!」
「良いのよぉ。またお台所汚れたら、来て頂戴ねぇ」「はーい」
高田部長が大声で会話している。すると本部長も、窓を閉めながら叫ぶ。
「そうだなっ! コイツ居なくても、今日の訓練は問題ないしなっ」
酷いことを言う。何て奴らだ。それでも二人に『どの口が言う』なんて聞いても無駄だ。揃って『この口』と答えるだけだ。
牧夫は、電車で会社に行きたかっただけなのに。
「行きますよ! 乗せて下さい!」「えぇー? 乗るのぉ?」
仕方ない素振りで『丸目四灯』に走り寄る。さぁ、会社まで、眠れないドライブの始まりだ。




