ハッカー殲滅作戦(五十四)ハッカーの反撃
「カンパーイ!」「カンパーイ!」「カンパーイ!」
本部長、高田部長、牧夫の三人は、注がれたビールジョッキを持って乾杯した。
クゥゥゥッ! 仕事の後のビールは美味い!
「さぁ、どんどん食え! 美味いぞぅ」
本部長が『バンバン焼き』を始めた。あっという間に鉄板が肉で埋まって行く。
それを箸で、どんどんひっくり返して行くのは、高田部長と牧夫の役目だ。
「そう言えば牧夫、お前飲めたのかぁ?」
「えぇ。ちょっとだけなら」
人差し指と親指でも示す。そして、ペコペコ頷いた。
まぁ、美味そうな肉を前にして、下戸は一旦お休みだ。笑顔の牧夫はそう言うことにして、再び肉をひっくり返す。
ジュージュー焼ける肉の音が、食卓に轟いている。
高田部長が良く焼けた肉を一枚取って、本部長の皿に一枚乗せる。そして、レア気味のを自分の皿に三枚。
パクっと一口に頬張ると、流石の高田部長も笑顔になった。そして、グビグビっとビールを流し込んで行く。
「良いねぇ。良い飲みっぷりだねぇ」
そう言っているときだけ、本部長の箸は止まる。
その間に牧夫は、まだ焼けていない肉を火力の強い所へと配置換え。
すると、動き始めた本部長の箸は、スペースの空いた火力の弱い所へ肉を置いて行く。三人の流れるような連携だ。
仕事もこれくらい協力し合えば良いのに。
「奥さん! ビールお代わりお願いしまぁすっ!」
「はいはい。孝雄ちゃん。最初から飛ばしますねぇ」
本部長の妻、本部京子が笑顔で応待する。突然の来訪であっても、嫌な顔の一つもせずにいるのは、大したものだ。
「はい。これ、お通し。グラス頂きますね」
高田部長がグラスを渡す。その横では、京子から貰った皿を受けった牧夫が、じっと『お通し』を見ている。
「これ、何ですか?」
「お塩ですよ? ホホホッ!」
空ジョッキを持って、口を押さえて笑う京子は台所へ行ってしまった。そこにビールサーバーがあるのだ。サーバー名は知らぬ。
牧夫が『これが本当の塩対応』なんて思っていると、それを高田部長がパッと取り上げた。
「本部長、お塩、来ましたよぉ」
流れるようにササっと差し出す。本部長は手を止めて笑顔になると、それを受け取った。
「おぉ、すまんねぇ。やっぱり日本酒にはコレだよなぁ」
塩は、普通に『お通し』だったようだ。しかもその塩を一掴み取ると、自分の肉にパラパラっと振りかけた。
「美味いっ!」「ささっ、もう一枚焼けましたよぉ」
飲んで歌って踊って飲んでは、まだ始まったばかりだ。




