表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
405/1535

ハッカー殲滅作戦(四十)

「私の趣味ですか?」

 何だか『取って付けた』ように始まった会話。琴美は何だろうと思って笑う。これではまるで『お見合い』ではないか。

「はい。何が好きですか?」

 大尉は頷いて、更に聞いて来た。琴美は『やっぱりお見合いだぁ』と思いながら、それでも話を合わせることにする。

 自分に興味を持って貰うことは、悪いことではない。


「お花が好きです」

 琴美が小首を傾げながら答える。これなら問題ないだろう。

 言われた大尉は、琴美の真っ直ぐな目を見て『しまったぁ』と思う。薔薇の花束でも、買って来れば。そんな思いだ。

 後悔しても遅いのだが、いや今回、それは買わなくて良かった。


「薔薇とか、お好きですか?」

 それでも大尉は聞いて見る。何なら帰りに買っても良い。

「薔薇も綺麗ですけど、ベゴニアが好きですね」

「ベゴニア?」

 大尉は聞き返す。どうやら『ベゴニア』は知らないようだ。


「はいっ!」

 琴美が笑顔で答えた。満面の笑み。話題としては申し分ない。

 しかし大尉は焦る。知らない花で、どうやって話題を繋ぐべきか。趣味の話って、映画とか読書とか、そういうことでは?


「珍しいのは、ベゴニア・デレメンシス・ワーネッキーとかぁ」

「おっ? おぅ」

「あと、エラチオールとか、センパフローレンスも良いですよねぇ」

 琴美の目はキラキラしているが、大尉にはサッパリだ。


「井学さんもお花、お好きですか?」

「えぇ。薔薇とかぁ。桜とかぁ」

「まぁ。男性で薔薇が好きなんて。オールドローズ? モダンローズ? それとも、イングリッシュローズ?」

 大尉は固まった。何だこれ。練習と全然違うじゃないか。


「白い薔薇が好きですね」

 咄嗟の答え。大尉は『パラシュート』を思い浮かべていた。すると琴美が嬉しそうになって、前のめりに来る。

「じゃぁ『ファビュラス!』『アウト・オブ・イエスターイヤー』『アンナプルナ』どれが好きですか? あぁ、意外にも『ロサ・ムルティフローラ・ワトソニアナ』が好きとか、ですか?」

 凄い早口。ひとしきり言った後に水も飲まず、大尉を見つめる。

 見つめられた大尉は、只ひたすらにまばたきを繰り返すばかり。


「まぁるい奴が好きですね。扱いは難しいんですけど」

 大尉は『パラシュート』を思い浮かべながら答える。すると琴美が、更に嬉しそうになって、グッと顔を近付けて来る。

 大尉は目を大きくした。それ以上来たら、胸元が見えてしまう。


「素敵! じゃぁ、アウト・オブ・イエスターイヤーで決まりっ!」

 琴美が背もたれに戻りながら、右手をパチンとやっている。


「お待たせしました。ミートドリアンです」

 多分ミートドリア。お盆から一つ持って、どっちのか聞いている。

 大尉は『助かった』と思って、うっかり先に手をあげてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ