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ハッカー殲滅作戦(二十六)

「それじゃないでしょっ!」

 楓の突っ込みは結構激しい。『パッカァン』と音がしたのを、朱美はじっくりと目に焼き付けていた。

「えぇ? 何がよぅ」

 男の『好み』を調査しておくことに何の問題があったのか。琴美には理解できない。楓は呆れた顔で琴美に諭す。


「あなたが好きな男は『731部隊』なのよ? 大丈夫なの?」

 楓のブン投げ込んだ球は、時速百二十キロのストレート。

 それが打つ気満々で、前のめりだった琴美の頭に直撃した。たちまちヘルメットが、後方に回転しながらはじけ飛ぶ。

 ボールは高く舞い上がって、引力と釣り合った所で止まる。そして重さ百九十グラムの物体として、自由落下を始めた。

 それが琴美の頭に『ポン』当たって花が咲く。もちろん『マーガレット』である。


「だぁかぁらぁ?」

 当たったのが幾ら『ソフトボール』であったとしても、頭に直撃したら、それはおかしくもなるだろう。

 朱美は手を伸ばし、琴美の頭を撫でる。『痛いの痛いの飛んで行けぇ』だ。あの山超えて里超えて、地球を一回りして楓まで。


「だからじゃないでしょうがっ、あんた実験台になっちゃうよ?」

 楓の顔が『友達を心配する顔』になっている。どうやら演技ではなさそうだ。

「そんなの判らないじゃない。そんな悪い人じゃなかったよ?」

 呑気に首を傾げる琴美を、朱美は『そうだ? そうだ?』と、思いながらも撫で続ける。


「ちょっと、お義姉さんも言ってよぉ」

 困った体で楓に言われ、朱美は直ぐに琴美から手を引いた。


 何だって急に『731部隊』なんて言った? 私を試している?

 いや、ここで私が『協力者』だとバレたら、ここで生活していくなんて、無理になっちゃうじゃん。

 それに『秘密の部隊名』なのに、何で楓ちゃんが知っているの?


「731部隊は東京都の水質をね、守っている所なの」

 表向きの説明は、間違ってはいないだろう。朱美は琴美の方を見て説明すると、楓の方に同意を求めるように、振り向いた。


「私、朱美さんが『協力者』って知ってるよぉ」

 朱美の耳に、琴美の声がダイレクトに飛び込んで来た。

 驚愕して振り向けば、琴美からにっこり笑って指さされる。

「誰に聞いたの?」「楓からぁ」

 琴美の指が、ヒュッと楓を指す。あっち向いてホイで楓を見た。

「そうなの?」「うん。教えたぁ」

 ここまで三秒四。五十メートル走なら世界記録だ。


「731部隊は『人体実験やってる』って、知ってるよぉ」

 琴美の頭には、白いマーガレットが咲き乱れ、風に吹かれて揺れている。モンシロチョウも飛び交うその風景は、春真っ盛りだ。

 それを楓と朱美はそんな風景を、驚きの眼で凝視していた。

 すると琴美は、その内の一本を優しく摘み取ると、呟き始める。


「すきぃ。きらぁい。すきぃ。きらぁい。すきぃ。すきぃ。すきぃ」

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