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ハッカー殲滅作戦(十八)

「ジャーン! ここが私の部屋デース!」

 言われなくてもドアに『楓の部屋』と『関係者以外禁止』の看板があったので判る。関係者の定義については不明だ。

「おぉ、楓にしては、奇麗にしてるジャーン」

 確かにそれは言える。ただし、普段使っていない部屋なのだ。片付いているのも当然と言えるだろう。


「やかましいっ! ほら、そのテーブルこっちに出して」

「あぁ、はいはい」

 楓に言われた通り、琴美は折り畳みのテーブルを引っ張り出して、組み立て始める。

 パタンパタンとテーブルの足を出して、部屋の真ん中に置く。あぁ、微調整は楓の仕事のようだ。


「あとクッション三つぅ」

「はいはーい」

 ベッドの所を指さした楓の指示通り、琴美が座布団として使えそうなクッションを三つ取り上げた。

 それを何処に置いて、誰が何処に座るか決めるのは、やはり楓の仕事のようだ。

 まぁ、楓の部屋だし。当然だろう。琴美は納得して指示通りの場所に座った。それを見て楓も座る。


「(コンコン)失礼しまーす」

 開け放たれた扉をノックして、朱美がお盆を持ってやって来た。楓が顎で指示する前に琴美が動き出し、扉を閉める。

「あっ、すいませんね」

 お礼を言ったのは朱美だ。お盆をテーブルに置くと、さっきのティーテーブルを再現し、空になったお盆をテーブルの下に置く。

 そこへ琴美も参戦したのだが、今更に琴美は思う。

 ドアを閉める振りをして、逃亡すれば良かったと。


「じゃぁ、『男』の話、聞かせて貰いましょうか」

 朱美が『やけに明るいスタンド』を手に持って、琴美に近付ける。

「うぅ、何も知りません。し、知らないんですぅ」

 朱美は笑っている。もちろん件のスタンドは『振り』だ。琴美も眩しそうにしているが、それも巧妙な『演技』だ。


「田舎の母さんが、悲しんでいるぞ?」

「それ、古くない?」

 楓のセリフは琴美に効かなかったようだ。ではと、楓は考える。

「じゃぁ、『かつ丼、食べるか?』にするわぁ」

 それも定番だが、それも琴美には効かなかったようだ。

「いやいや。今日は『マフィン』にするわぁ」

「だよねぇ。一杯食べてね」

 朱美がマフィンを勧めながら『少佐だったら何て言うかなぁ』と考えていた。ちょっと不謹慎である。


「琴美からさぁ、『男』紹介されたのにさぁ、琴美にさぁ、持って行かれたんだよねぇ。ねっ! 琴美! 酷くない? ねぇっ」

 いやみったらしく、そして未練がましく、かつ悔しさも交えて楓が言う。朱美は楓と琴美を見比べて、そして驚いた。

 楓がこんんんんな表情をして、残念がるなんて。

 よっぽど素敵な男だったに違いない。自分も一度見て見たかった。


 楓の目が笑っているのは、抜きにして。

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