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ハッカー殲滅作戦(十四)

 リビングに通されると、流石に金持ち感が漂い始める。

 高そうな絵画、大きなテレビ、グランドピアノ。どれも一般家庭にはないものばかりだ。

 ソファーとは別に、軽食でもできそうな、洒落たテーブルがあるのも素敵だ。

 紅茶でもあったら、それは素敵なティータイムになることだろう。


「いらっしゃい。お久しぶりですね」

 エプロンをした朱美が現れた。手には丸いお盆。漂う紅茶の香り。どうやら客人のために、紅茶を用意していたようだ。

「あっ、先日はどうも。今日はお邪魔します」

 会社見学のときとは違う普段の朱美は、楓以上に素敵なお嬢様そのものだ。いや違う。今は奥様か。


「いらっしゃい。楓の兄の、徹です」

 柱の陰からシュっとしたイケメンが現れた。

「あっ、どうも、琴坂琴美です」

 琴美は直ぐに頭を下げる。徹は苦笑いで手を横に振る。

「いつも妹がお世話になっているそうで。ご迷惑ではないですか?」

 エプロン姿なのは、お茶の支度を手伝っていたからだろうか。ちらちらと、横の楓を見ながら気の毒そうに言う。


「ご迷惑ではないですか?」

『はい。ご迷惑です』とは言えない。隣で同じ角度で頭を傾ける楓は、絶対に何もしていない。呑気なもんだ。

「とんでもございません。助けて頂いているのは、私の方ですから」

 嘘ではない。今まで『楓さまぁ』と泣きついたこと、数知れず。

 その度に『高い金利』を払い、今までの大学生活を乗り切って来た。そんな楓様に頭が上がらないが、頭突きはできる。


「ほらねぇ。言った通りでしょう?」

『これこれ楓さん? 何を言ったんですか? 答えなさい!』

 心の中で琴美は突っ込む。そして徹の方を見た。

 徹は目を丸くし、口をへの字にして納得しているではないか。そしてエプロンを脱ぎ出した。


「すいませんが、私と徹は出かけて来ますので、どうぞごゆっくり」

 若い者同士のやりとりをにこやかに見ていた静が、後ろから琴美に話しかけた。

 どうやら静は、楓と仲良しの琴美を一目見たかったらしい。そして安心したのだろう。元々徹と出かけるのは決まっていたようだ。


「朱美さんもお出かけですか?」

「いいえ。お義母さまと徹さんは『デート』です」

「え?」

 どういう関係? 琴美が判り易く顔を曇らせたのを見て、朱美は口を押さえて笑う。


「今日、お義父さまはお仕事なので、その代理です」

「あぁ、なるほど」

 パッと笑顔になった琴美を見て、朱美は思う。

『だってこっちの方が、面白そうなんですものっ』

 それは口にはしない。思うだけだ。


「本当は『こっちの方が面白そう』って、思ったんじゃ?」

 ヒュッと琴美に指さされても、朱美は眉毛を少し動かしただけだ。

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