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ハッカー殲滅作戦(九)

 大佐、別名黒田は電話に夢中だ。ご主人はテレビを消したので、向こうの方で新聞を読んでいる。何とも不思議な店である。


「了解。ご苦労さん。ありがとう」

 黒田が受話器をカウンターに置いた。するとご主人が新聞を降ろして立ち上がる。

 電話の会話が聞こえていたのか、それとも黒田が聞こえるように『ゴッ』とカウンターに置いたからか。どちらかは不明だ。

 とにかくご主人は、笑顔で『そのままで結構ですよ』と目で訴えて頷くと、黒田はヒョイと右手をあげて礼を示し、席に戻る。

 ご主人はテレビを付けて、カウンターに放置された受話器を元に戻した。そしてテレビタイムに戻る。

 相変わらず他に客はいない。不思議な店である。


「アパッチ、注文しといたからな」

 追加のチャーシューでも頼むかのように、サラリと言う所が怖い。

「ちょっと、待って下さいよぉ。もぉ。知らないですからね?」

 素人みたいにヘリを買わないで欲しい。使い捨てなのか?

 整備場も、予備の部品もなしに、ヘリなんて買ってどうするのだ。燃料だってガソリンスタンドに行けば買えるものでもない。

 いや、黒田ならポイントカードとか渡されて、『ちょっと給油して来い』とか言いそうだ。


 まったく。勘弁してほしい。せめて『ハイオク』とか『レギュラー』とか、油種を指定して欲しいし、給油口だって、どっちにあるか位、教えてくれないと困るではないか。冗談抜きで。


「お? て言うことは『反対』じゃないんだな?」

 黒田は黒井を指さして、笑いながら席に戻る。黒井は『もう、どうにでもしてくれ』と言いたげな、渋い顔をして右手を横に振る。


「その年で、『大佐』なんですか?」

 黒井はちょっと『嫌み』を込めて言う。すると黒田は、自分を指さして『俺?』な反応をした後に頷いた。

「あぁ。昔な」

「何だ。ですよね。やっぱり黒田さんも『軍人』だったんですね」

「もう、遠い昔さっ。色々あった昔々の日々」


「じゃぁ、退職昇級で『大佐』ですか? えぇ?」

 今度は『ちょっとからかう体』で言う。

 軍人が退役した後の恩給は、階級により金額が異なる。だから真面目に働いた軍人に対し、退役するチョイ前に昇級させることだ。

 つまり『本当は中佐ですよね』と言っているのだ。


「うるせえなっ! 真面目に働いたんだよ!」

 珍しく黒井の言葉が『心の琴線』に触れたのか、黒田は怒り出す。しかし、だからと言って黒井が引く様子はない。

「あんなことや、こんなこと?」

 悪戯っぽく言って指さした。こんな奴、どうせ碌なことしている訳がないのだ。いっつも、いっつもふざけてばかり。


「そうだよ。『あぁん』なことや、『こぉん』なことだよ」

「いや、『こぉん』ってなんですか!」

 言い合いながら席を立つ。黒田は『うるせぇなぁ』な顔をしていたかと思うと、ご主人に向かって笑顔になり、軽く右手をあげた。

 向うも笑顔でお辞儀している。どうやら『つけ』が効いたようだ。

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