表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
373/1532

ハッカー殲滅作戦(八)

「お前にはさ、ちょっと『特別なこと』お願いしようと思っているんだよ」

 ニヤリと笑った黒田の笑顔が怖い。黒田にとって『普通のこと』が、黒井にしてみれば既に『特別なこと』だからだ。

 今までのことを振り返れば、あれもこれも。こちらが慣れないといけないのか? いや、慣れるなんて出来るのだろうか。


「『特別なお願い』ですか? 嫌な予感しかしませんが?」

 あからさまにくしゃくしゃな顔で、目一杯嫌そうな顔をする。黒田にそんな顔をしても通じない。むしろ喜んでいる感すら漂ふ。


「お前、ヘリも行ける?」

 シュっと人差し指を黒井に向けて、黒田が聞く。ここで『いいえ』と言っても『訓練しろ』で終わりになりそうだ。

「ちょっとなら。機種は、大分限られますよ?」

 片目を瞑り口をへの字にする。加えて右手の親指と人差し指で『ちょっと』を示す。判って頂けますでしょうか? 判りますよね?


「おぉ、充分! 充分!」

「充分じゃないっすよぉ。判ってないじゃないですかぁ!」

 まったく、不安しかない。一体何をさせようとしているのやら。

 黒井は、頭の片隅に追いやられた『ヘリの操縦基本編』を引っ張り出す。ラダーに操縦桿に、スロットル。

 結構面倒臭いんだよなぁ。ヘリって。


「まさか『武装ヘリ』じゃないですよね?」

 突然黒田が笑顔になり、目をキラキラさせるとスマホを取り出す。黒井は『あっスマホ持っているんだ』と思った所で思考が停止する。


「え? お前『アパッチ』も行けるの?」

 まるで『今から注文を変更する』勢いで聞いて来た。もう黒井とスマホを交互に見ながら、ダイヤルを始めたではないか。


「無理無理無理無理無理!」

 黒井は椅子から飛び上がって、テーブル越しに構わず黒田に飛び掛かる。しかし、固定の椅子とテーブルは『ガタン』と言うだけで、しっかりと飛び掛かれない。

「ちょっと! 何だよ!」

 笑顔でスマホをテーブルの下に隠し、ダイヤルをし続けている。


「無理だから! 操縦しながら攻撃とか、素人には無理だから!」

「なんだぁ。そんなことかぁ」

 のんびりと答える。黒井の手の届かない所でダイヤル続行。

「そんなことって、どんなことすかっ! ちょっと!」

「ちょっと『訓練』すれば、行けるよ。お前なられる!」

 ダイヤルが終わったのだろうか。黒井の方を見て笑った。


「どこでどうやって『訓練』するんですか!」

「そんなの『OJT』で。なぁ?」

 オン・ザ・ジョブ・トレーニング。働きながら学びましょう。


「無理無理無理無理無理!」

 再び黒井が黒田に飛び掛かる。黒田は『しょうがねぇなぁ』の目でそれを避ける。


「判った判った。『マンツーマン・トレーニング』するからよ」

「本当ですか?」

 ピタッと黒井の攻撃が止まった。『なら行けるか?』とでも思ったのだろう。流石、生粋のパイロットである。


「アパッチって、複座でしたっけ?」

 黒井が首を捻る。そこまで詳しくはない。

「そうだよぉ。知らんけど」

「ちょっと、どっちなんですかぁ」

 どうも黒田の言動が怪しい。そうだ。この世界に『アパッチ』があること自体確認が取れていないし。

 それに『日米同盟』なんて、締結されていない。あるのは『日英同盟』だけだ。アメリカの機体が、簡単に日本に入って来ること自体、難しいはず。それなのに?


「確か、前の席が『攻撃用』で、後ろが『操縦用』だったかなぁ」

「良く知ってますねぇ。って、操縦者は『一人』じゃないですかっ」

 考えている場合じゃない。勝手に話が進んでしまっている。

 再び黒井が、黒田に飛び掛った。だから無理だって!


「じゃぁ、オプションで『前でも操縦可』にしてもらうか!」

 笑顔で右手で『まぁまぁ』と上下に振りながら、まるで車の助手席にも『ハンドルを追加』みたいなノリで言う。

「勘弁して下さいよぉ」

 黒井はがっくりと自席に崩れ落ちた。


「大佐! お電話ですよぉ」

 急に店のご主人から声が掛った。サッと立ち上がったのは黒田だ。

「あいよぉっ!」

 スマホをしまって右手をあげる。ご主人も受話器を持ち上げて、笑顔を見せた。どうやら黒田は『大佐』という偽名もあるらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ