ハッカー殲滅作戦(六)
「とにかくさ、その『ミントキャンディーズ』を潰さないと、うちらが『機械化軍団』に襲われて、死んじゃう訳さ」
「じゃぁ、731部隊の方に助けを求めるんですか? 嫌ですよ?」
「まぁ、そっちは喜ぶだろうな。しかしなぁ。協力した所でさ、行先は『研究所』だろぅ?」
苦笑いしながら黒田が言う。黒井は椅子に寄り掛かった。
「ですよねぇ。はぁ。何なんだかねぇ」
再びその話に戻って来たが、もう食事は済んだ。黒井は炒飯どんぶりにレンゲを放り投げると、カランと響く小さな音を聞いていた。
「最近は『人権』に考慮して『丸太』から『マネキン』に変えたらしいぞ?」
黒田も食事が済んだからか、爪楊枝でシーシーしながら言う。
それを聞いた黒井は耳が痛い。溜息をして眉をひそめた。
それもそうだろう。歴史の教科通りの隠語が、平行世界とは言え、この現実世界でも通用している事実。それに驚くばかりだ。
「それは『丸太業界』からクレームが入ったんじゃないですか?」
茶化すように言って水を飲む。本当に忌々しい。
「何だそれ。『マネキン業界』からだって、来るだろう?」
言われて見れば最もだ。黒井は考える。
「お前はどっちの味方?」
「両方嫌ですよ!」
黒田の問いに、ノータイムで答える。具体的な案はないが、どちらと戦っても命がないとは。
「この間の『ラップトップ』から、何か判らないんですかねぇ」
「黒松に聞いて見るけど、レッド・ゼロに渡しちゃったしなぁ」
それを聞いて黒井も思い出した。『自動警備一五型』のコンソールだった。仕方ない。別の案を考えよう。
「その『自動警備一五型』を乗っ取って、731部隊にぶつけちゃえば良いんじゃないですか?」
我ながら名案と思いながら、黒井は黒田に提案した。
「それも黒松次第だなぁ。それが出来れば良いんだけどなぁ」
どうやら黒田も、同じ考えだったようだ。いや、それぐらいのこと、ずっと前から検討されていたのだろう。
「今度さ、貨物列車手配してあるからさ、お前運転覚えろ」
唐突に飛び出した言葉に、黒井は驚くばかりだ。急にそんなこと言ったって無理だ。前のめりになって否定し始める。
「いや、俺は無理っすよ。俺は『空』専門なんで」
黒井はそのまま固まった。何故か黒田がまた笑っているからだ。
「お前、やっぱり『パイロット』なの?」
黒田も前のめりになると、小声で聞いて来た。
茶化す様子もなく、目がマジだ。黒井は周りを見渡したが、他に客はいない。悩んだが、決心して唾を飲み込む。
「そうです。俺は『パイロット』です」
黒井も小声だ。口に手を添えて話す。黒田は真顔のまま頷く。
「何乗ってたの?」
「F2です」
小さい声での問答。黒井は暫く、そのまま続くのかと思っていた。
「すんげぇじゃん! 何? 『ブルーインパルス』だったとかぁ?」




