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ハッカー殲滅作戦(五)

「じゃぁ、そいつらを踏んづかまえて、始末しちゃうんですか?」

 ちょっと斜に構えて黒井が聞く。その様子は一端の『暗殺者』のようであるが、本日の暗殺も失敗である。


「いや、る前に、聞くことを聞いてからだな」

 炒飯を食べながら淡々と言う黒田の方が、よっぽど『危ない奴』のように見えるのは、気のせいだろうか。

「何を聞くんですか?」

「例の機械の『一式』分、色々だよ」

「随分時間掛かりそうですねぇ」

 もう黒井のラーメンはなくなっていた。まったく時間が掛っていないのには感心する。まるで戦場での食事のようだ。


「だからさぁ。『コトコト』ちゃんが居れば良かったんだけどさぁ」

「ブラック・ゼロのメンバーですか?」

 黒井は聞きながら、炒飯に手を付ける。麺のなくなったラーメンは、スープ代わりだ。

「いや、一般人だ。ただ『戦争反対』って言ってな? うちに協力してくれていたんだ」

 残念そうに黒田が言う。黒田は納得して頷いた。


「そうだったんですか。で、られちゃったとか?」

 親指で自分を首をシュっとやる。すると意外にも黒田が頷いた。


「それはな。ある雪の降る夜の出来事でなぁ」

 神妙な顔で黒田が話し始めるのを見て、黒井は笑いを堪える。

「ちょっと、そこで思い出の世界に飛ぶのは、なしですよ?」

「あぁ、そう? まぁ、俺も詳しいこと知らないし」

 さっきの話始めは、どうやら『架空の物語』だったようだ。

 黒井は口をへの字にして首をすくめる。炒飯の間に話しを挟むのを止め、餃子を挟むことにした。


「ヘリコプターが、街中に墜落した事故があってさぁ。それから『プッツリ』と、連絡が取れなくなったんだよねぇ」

「搭乗してたんすか?」

 気の毒そうな顔をして黒井が聞くと、黒田は首を横に振る。

「いや、そういう訳じゃなくてね」

 黒井は嫌な思い出が蘇るが、聞かざるを得ない。

「じゃぁ、地上に居て、ですか?」

「あぁ。だと思うんだよねぇ。聞いてたお家がそっち方面でさぁ、何人か亡くなった人が出てたから。皆で話してたんだ」

「そうですか。じゃぁ、ニュースで名前が出たとか?」

「出たけど判らんよ。ほら、知ってる名前は『コトコト』だし」

「なるほど。じゃぁ、特徴とかは? 性別とか年齢とか」

「それもさぁ、全然判らないんだよね。『文字だけ』だから」

「そうだったんですかぁ」

 ちょっとしんみりになって、餃子をパクリと食べる。もうそんなに熱くはないが。


「俺なら、なるべく人がいない所に、落としますけどねぇ」

 墜落の直前まで操縦桿を握っていた感覚が、今でもある。

「え? お前何? ヘリ運転できるのぉ?」

 黒田が素っ頓狂な声で聞かれる。珍しいことだ。黒井は笑う。


「嫌だなぁ。『操縦』って言って下さいよぉ」

 片目を瞑ってレンゲで黒田を指さすと、その黒田も笑っていた。

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