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失敗と成功の狭間(四十八)

「ちょっと待って!」

 進は慌て始めた。自覚はないが、顔も真っ青だ。

 電話の相手は、あの怖いお母様の愛娘『弓原楓』様だ。そんな危険人物様にどうして『自分の連絡先』なんて、教えられよう。

 そんなの、まるで『どうぞ殺しに来て下さい』と、お願いしているようなものだ。


「あぁ、ちょっと『ヘタレ』だったわぁ。一旦切るね」

 琴美はスマホをテーブルに放り投げて、溜息を漏らす。


 琴美が日常に於いて、楓のためにしてあげていることがある。それは『デートの日程調整』だ。

 まったく、根性のない男が多すぎる。

 琴美の所にやって来る男の約100%は、楓への『取次』だ。

 やれ『弓原さんに渡して欲しい』とか、やれ『弓原さんの連絡先教えて』とか、やれ『今度食事に誘いたい』とか。

 まったく。『直接申し込めよ』と、言ってやりたい。


 楓のスタイルは基本『誘いは断らない』のだ。だから直接デートの約束をして、それで『玉砕して来い』と。そういうことだ。

 ちなみに『告白』に対する答えは、秒速で『ごめんなさい』である。好き嫌いは誤解がないようにはっきり伝えるらしい。

 それだって、もう何度も見たことがある。目の前で。うぜぇ。


 だから、目の前の男もまた、仕方のない奴だ。

 まぁ、ちょっと? 大人びてはいるが、質問の傾向からして、チャラチャラして締まりのない『やりまん』かよ。

 あ、違う逆、逆。挿れる方。まぁ、とにかく最低な野郎だ。

 楓もどんな男でも『チャンスは与える』のだから。まったく。

 友達として、心配してしまうよ。大丈夫なの?


 あぁ。こいつも、折角スケジュール調整してあげたのに。何て奴だ。連絡先の交換を拒否するなんて。面倒臭い。


「じゃぁ、質問の続きに行きますね」

「え? いや、まだあるの? 何で?」

「有りますよぉ。『パンパン』有りなんだから当然です」

 琴美は『潰すぞ』の目、いや『殺すぞ』の迫力で、進を睨み付けた。すると相手はたじろいだのか、黙り込む。チョロい相手だ。


「週三で『パンパン』して、何週目から浮気しますか?」

 タブレットを見ながら質問を開始する。多分『第よんもーん』だ。

「浮気はしませんよぉ」

 それを聞いて琴美は、進の目を見て確認する。なんだ。眼球は泳いでいない。どうやら本当のようだ。しかし質問は続く。


「妊娠中は『パンパン』できませんが、その時は?」

「え? 浮気?」

 進は変な質問に戸惑いながらも、確認のために聞き返す。

「そうですよ。決まっているじゃないですか。浮気、するんですね」

 琴美はイライラ声。素早くタブレットを操作する。進は慌てた。

「しませんよ! 浮気しません!」


「もう遅いです。居るんですよそう言う『口先だけ』の男が。まったく。知らない振りして、言訳ですか? 男として最低ですね!」

 琴美は進の答えを、タブレットに反映させる気はないようだ。

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