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失敗と成功の狭間(二十七)

 高らかに『軍人』宣言をした楓は、誇らしげに背を反らす。

 目を丸くしているのは琴美だ。それを見た絵理と美里は、対照的に笑っている。


「知ってたの?」

 琴美は、そんな笑顔の絵理と美里に聞いた。ちょっと声が高い、素っ頓狂な声だ。だから絵理も美里も笑い出す。

「いやいや、知らなかったの?」

「そっちの方が驚きだわぁ。ねぇ」

 美里が楓に同意を求めた。楓は前のめりからテーブルに肘を付けると、琴美に顔を近付けた。


「家の母方の実家が『軍隊』やっててさ。そういうことっ」

 琴美は訳が判らなくて首を傾げている。実家が軍隊? やってる?

「そういうことって、どういうこと?」

 反対側に首を傾けながら、琴美が再度聞く。楓も真似をして、同じ方向に首を傾けた。


「財閥って知ってる?」

「うん。三菱とか、三井とか、住友とか」

「おー、知ってるジャーン」

「うん。それ位は」

「でもね、そこは財閥でもね『超大手』」

「そうなんだ」

「そうそう。他にも財閥ってあるんだよ? 知ってる?」

「えぇ? わっかんないなぁ」

「マジかっ! 安田、古河、中島、野村、浅野、大倉、鮎川」

 楓が財閥の名前をスラスラと言う。琴美は反対側に首を傾げる。


「安田と中島と野村なら、小学生の同級生に居る」

 目をパチクリしながら答えた。すると、場の雰囲気が変わる。

「凄いじゃん! 今度紹介してよ!」

 楓が思わず目を輝かせる。こんな所に『伝手』があったとは!


「良いけど普通の奴だよ? 今は何しているのか、知らんけど」

 楓が肘を滑らせて『カクン』となった。やはり、名前が同じだからと言って、財閥の関係者とは限らない。そりゃそうだ。

「だと思ったよぉ」

 絵理はさっきからニヤニヤしているだけだ。


「楓は、何財閥なの? 三菱? 三井住友?」

「え? いや家は、吉野財閥って言うんだぁ。新興財閥だけどさっ」

「へぇぇ。そうなんだ。皆、知ってたの?」

 琴美は絵理と美里に聞く。すると二人共頷いたではないか。

「だってさぁ、『帝国石油テイコクオイル』の関係者って、言ってたじゃーん」

「そうだっけ?」

「琴美、そう言うの、全然興味なさそうだもんねぇ」

「そうだよ。『NJS』さえ、知らなかった位だしぃ」

 絵理と美里に矢継ぎ早に言われて、琴美は返す言葉がない。大体『財閥』なんて、教科書にしか登場しない単語じゃないか。

 それを判っているのか、優しいのは楓くらいだ。『まぁまぁ』と両手を上下に振って、二人を押さえる。


「でね。大きい財閥は『私設軍隊』を持っててね。私も入ってる」

 楓は自身を指さして笑顔。対する琴美は、目を丸くするばかりだ。

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