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失敗と成功の狭間(二十二)

 エレベータホールから、普通のエレベータに乗る。

 そしてグラウンドフロアで降りた。四人が乗ったのは、ハーフボックスではなく、椅子も何もない『普通のエレベータ』である。

 ビルの外に出ると、そこは一見『地上』であるが、実は海抜三十一メートルの人工地盤上である。


 人工地盤が出来る前から建っていたビルで、人工地盤を突き抜けている場合は、地球の表面が『一階』だったりする。

 そんなビルでも、人工地盤に出る階は『グラウンドフロア』と表記されている。大体のビルはね。


 一応、歩道と車道が整備されていて、自転車は迫害されている。それはこの世界でも変わらないようだ。

 折角『平らな地面』が出来たのに、オランダのように自転車王国とはなっていない。だからブレーキのない『ピストバイク』も、道路交通法違反になるのは、相変わらずである。


 琴美、楓、絵理、美里の四人は、幅の広い歩道をまるで酔っ払いのように、ふざけながら歩いている。

 みんな『ハーフボックス』に乗って移動しているからだろう。歩道を歩く人は少ない。

 車道はハーフボックスを乗っけた台車が、自動運転で音もなく、時速二百キロで駆け抜けている。


 交差点に信号はなく、横断歩道もない。

 歩道を歩いている人の情報は、監視カメラで捉えられており、人工知能がその行動を予想している。

 だから『安全』と判っている間は、全速力走行なのだ。


 道路を横断すると判断された場合は、道路から台車に通知される。台車にも赤外線を始めとした各種センサーが搭載されており、減速や停止をする。

 しかし『歩行者』がいる道路は、そもそも避けてルートを選択するので、近道を目的に裏道をショートカットする台車は存在しない。


「どっちのラーメン屋にする?」

「珍来にしようよ。餃子食べるっしょ?」

「おう! ニンニク餃子いくべ!」

「いくべぇー、奢りですか?」

「安いんだから、自分で頼みなよぅ」


 そんな会話をしながらフラフラ歩いていても、大丈夫なのが東京の街角なのだ。

 まぁ、彼女らは『かなり珍しい存在』だとは思う。

 普通だったら、ショッピングセンターか、ビル内の商店街にでも行って、小奇麗な店に入るのが相場だろう。


 彼女たちが目指しているのは、今はすっかり珍しくなった、個人経営の町中華である。木造住宅であれば、人工地盤の上にでも建つ。基礎が要らない分、安上がりとも言える。

 コンクリートのビルが乱立する一角に、ポツンと開発から取り残されたような飲み屋街があれば、人は吸い込まれて行くものだ。

 昔ながらの路地と、電柱と、街灯が映える。

 そして、切れかけの蛍光灯が点滅する看板の下で、野良猫が煩そうに見上げている。

「とうちゃぁく」「うぇーぃ」「今日は飲むぞぅ」「ダァメだよ!」

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