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失敗と成功の狭間(二十一)

 全ての設定を元に戻して、琴美は空軍情報部を後にした。

 今はこんな所で遊んでいる暇はない。ラーメン屋に行くのだ。

 NJSに戻り、カイトのPCも退去する。そろそろお茶配りから戻る頃だ。ハッキングに必要なプログラムを終了して、早々に退去。


 問題なのは、こいつのPC。イーグル、こいつは本当にクズだ。

 こいつ、会社で本当に仕事をしているのだろうか? 

 良く『あいつは仕事が出来る』と言われている奴が、蓋を開けてみれば『ただ指示を出しているだけの奴』なぁんてことは、ある。


 コックだったら『コーヒー飲んでないで、オムレツの一つも作ってみろよ』と、言ってしまう感じ。分るかなぁ。この気持ち。

 あぁ、でもそう言う奴に限って、黙ってホイホイと作った後、コーヒーを飲みに戻りそうで怖い。

 そんなオムレツが『一番美味い』って落ちは、あるんだろうなぁ。


 まっ、イーグルのチャットに、カイトへの指示を出しておこう。

 そうしたら、このチャットがダミーではなく、『生きているチャット』であると、証明できるだろう。そんなことが証明されたら、この企業にだけには、就職したくないけれど。はぁ。

イーグル「カイト、お前、まだ残業してんのか?」

カイト 「もう! 邪魔するからじゃないですかぁ」

イーグル「知るか。たまには家族にお土産、買ってるのか?」

カイト 「全然。娘は寮だし。会うのは週末だけですよ」

イーグル「じゃぁパステルでケーキ買って、家族のご機嫌取れよ?」

カイト 「え? この間、何だか凄く怒られましたよ?」

イーグル「それはお前のチョイスミスだろ。そこまで知るかよ」

カイト 「はぁ、判りました。ご機嫌取りまーす」

イーグル「良し良し。あと、娘さんに仕送りしてやれ」

カイト 「えー、バイトしてるから、俺より小遣い多いっす」

イーグル「馬鹿だなぁお前は。そういうのは、千円でも喜ぶぞ」

カイト 「あぁ、なるほど。流石です。勉強になります」

 琴美はチャットを抜けて、NJSを後にした。

 急いでパソコンやら何やらを隠し、全ての設定を元に戻す。

 今頃、部屋でバタバタし始めた琴美の姿が、監視カメラに写っているだろう。


 案の定リビングに行くと、琴美が最後だった。

「おそーい!」「またエロ動画、見てたんでしょぉ」「好きねぇ」

 時計を見ると、五時五十五分。集合時間より前ではないか。


「五分前集合だから、セーフ!」

 一番遅くやって来た琴美が言っても、それは用法が合っているとは思えない。現に他の三人は、席を立つ。

 そして、ぞろぞろと歩き始めた四人が向かうのは、何故か琴美の部屋である。琴美以外、全員靴を持っている所から見ても、それが至極当然のようだ。


「何で私の部屋を通るのよぉ」

「エレベータホールに一番近いから」「せいかーい」「悪いねぇ」

「楓は、もう靴、履いてるじゃん!」

「あっ、バレた?」

 反省は顔だけだ。琴美は口をへの字にして、スニーカーを履く。

 そこへ『ピロン』と琴美のスマホに着信音。それを見た琴美の表情が、パッと笑顔に変わる。

 どうやら、親愛なるお父さまから『千円』、振り込まれたようだ。

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