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失敗と成功の狭間(十七)

「琴美ってさぁ、男、居るの?」

「ブッ! んっあぁぁ(ドンドンドン)」

「何か飛んで来た! きぃたぁなぁいぃ! ティッシュ!」

「駄目だよ美里。琴美に男の話はぁ。はいティッシュ」

「あっ、やっぱ? だよねぇ。どんだけ。驚きすぎぃ」

「変な方行っちゃった。ちょっと! 私のティッシュ、勝手に使わなっ、ゲフッ。もうぅぅ。美里も急に言うからぁ!」


 琴美の夕食用『万かつサンド』は、今行先が四か所に分散中だ。

 美味しい物は仲良く。上段左から①②③、下段左から④⑤⑥と六切れの部位は、楓が①、絵理が③、琴美が④、美里が⑥をモグモグしていた所だった。

 楓と琴美がティッシュを手にしている間に、絵理が②、美里が⑤を獲得。まったく隙が無い。


 思い起こせば五分前。

 琴美を美里が羽交い絞めにしている間に、楓と絵理がわき腹をくすぐって『是非供出させて頂きます』と言わせたのだ。

 こうして楽しい夕食は、開封してからは三十秒で終了した。


「今度から、三人分買って来なさいよ?」

 厳重注意したのは楓である。琴美の反論は、残念ながら各位の記憶には存在しない。


「ご馳走さん。でっ、さぁ? 兄貴の女になるぅ?」

 にこにこしている美里。一応結婚なんかした日には、琴美が『義理でも姉』になるのだが、その辺は深く考えていないようだ。

「軍のパイロットだっけ? お兄さん」

「そうそう。カッコイイよぉ どう? 琴美」

 随分プッシュしてくるじゃないか。しかしそれを見て、絵理も急に提案をブチあげて、割り込んで来た。


「ちょっと待って。家の兄貴も紹介するよ? 家の兄貴は海軍」

「絵理、待ちなさい。今日は家の兄貴の紹介!」

 珍しく絵理と美里が、寄りによって琴美を巡って言い争いを始めたではないか。

「あぁ、じゃぁ、家の兄貴も紹介しまーす! 家のはねぇ」

 笑顔で割り込んで来たのは、楓である。

「あんたの兄貴は、この間『売れた』ばっかりでしょうがぁ」

「そうよ。たっかぁいホテルで、式、挙げたんでしょ?」

 瞬殺である。まぁ、楓に家族を紹介する気は、無いようであるが。


「じゃぁ、言い出しっぺの美里からぁ」

 司会者を買って出た楓が、美里に発言権を授与。

「家の兄貴はね、入間の輸送隊なんだって。ほら、関東だから直ぐ会えるよ? どう?」

「えぇ。急だなぁ。パイロットは凄いと思うけど、輸送機だとさぁ、パラシュート、付けてないんでしょ?」

「ええぇ? まぁ、付けてないだろうねぇ。何? 琴美は、飛行機乗る時は、パラシュートないと、ダメ派?」

 聞かれた琴美は、目を丸くして答える。


「そりゃそうだよぉ。飛行機乗る時は、穴守稲荷のお札と、パラシュート必須だよぉ。軍用機なら、靖国神社の交通安全ステッカーが貼ってあるか、確認しちゃうよぉ」

 どうやら琴美は、信心深いようだ。

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