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失敗と成功の狭間(十四)

 ハーフボックスは『考えごと』をするのに丁度良い。

 行先は登録してあるし、料金も気にしないで良い。どうせ周りの景色は見えないし、見てもいない。

 隣の楓もスマホで音楽を聴きながら、ゲームでもしているのだろう。大人しくなっていて、丁度良い。


 懐かしくなって、うっかり質問なんてしたのがいけなかったのだろう。お義姉さんに目を付けられた。

 いや、そもそもこの『見学会』に応募して『二枚だけ当たった』とチケットを出したのが楓。その時点で既に怪しかったのだ。


 絵理と美里も凄く行きたそうにしていたのに、あみだくじで当たったのは楓と私。

 応募者も含めてのあみだくじ。一見『公平』には違いない。

 しかし、四人で適当に線を追加して行って、最後に一本追加したのは楓だ。瞬時に私と楓が当選するラインを見切ったに違いない。

 しかも、ジャンケンじゃなくて、あみだくじにしようと言ったのは楓じゃないか。


 絶対私を、あの美人の女スパイとバチバチさせ、シュールな戦いを展開させようとしていたに違いない。うん。まだ負けてはいない。

 何故なら、まだ何も『情報』を渡してはいないのだから。


 実は、楓とあのお義姉さんは、繋がっている?

 いや、そういう繋がりではなく、だから、そ、そんな? 繋がりではなく、何を言わせるのだ。『物理的な』という意味で、だ。

 まったく。変な想像をしてしまったではないか。

 つまり、あの二人は『義理の姉妹』ではなく『ギリの姉妹』。は?

 違うでしょ『ガチの姉妹』でしょ。はぁ? 『本当の姉妹』。これよ。どう? 良い線してるんでしょ? どうせ二人共。


 つまり、これまでの情報を整理すると、この世界には、私と同じ経験をした人が、意外と沢山存在するということだ。

 前の世界では、そんなの話題にもなっていなかった。

 時々『おかしなことを言い出す面白い奴』なら何人もいたけど、『梅雨休みどうする?』とか、わけ昆布わかめなことを言い出す奴らは? 居なかった。覚えていないが多分。


 あぁ。すると、やっぱり『君が代斉唱』は、良くなかったのかもしれない。君が代が『国歌』って決まったの、だいぶ後だし。

 お爺ちゃんに『君が代』と『海行かば』と『愛国行進曲』は三番まで歌えるようにしておけって、お風呂で良く練習させられたけど。

 やっぱり、十八番の『会津磐梯山』にしておけば? 良かったのだろうか。いやいや待て待て。あれは『マフィン』片手には歌えん。


 ん? すると、あの『マフィン』まで含めて、全てが計算され尽くされていたと? 琴原家を三代遡り、その全てが調査済? 人格・学歴・思想・性格・身長・体重。胸囲だ。くっ。いや脅威だ。

 まぁ良い。見てろ。まずは『マフィン』から逆調査だっ。


「ねぇ、あの『マフィン』どこのかね?」

「手作りじゃん? 家でも食べたことあるし」

「マジで? 凄く美味しかったって、お礼、言っといて」

「本当! 良いけど、だったら今度家においでよ。ねっ。決定!」


 ここまでが計算だった! はぁ『会津磐梯山』、練習しとこぉ。

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