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海底パイプライン(三百二十八)

「おいっ、どうすんだよっ! 当たっちまうぞっ!」

 言うだけ言って人任せ。特に何をするでもない。本当に口だけ。

 いやね。手で頭を守ったって、衝突したときの衝撃を考えれば意味があるとは思えない。そんなにぶつかるのが怖いなら、少しでも離れて『反対側へ行く』という手もあるのに。無駄かもだけど。

 何だか『怖いもの見たさ』に取り付かれてしまったか。窓の外を見て、衝突するのを『今か今か』と待ちわびているようにも。


『舵を切っても、直ぐには曲がらないでしょうよぉ……』

 口笛男は再び口を尖らせる。でもやっぱり鳴りはしない。

 舵が利いて来たのか船が傾き始めた。ここは慎重に。曲がらないと思って更に『ガツン』と操作すれば、舵が壊れてしまうだろう。


「当たる当たる当たるっ!」『これなら当たんねぇよぉ……』

 人は一度『当たる』と思い込んでしまったら、結果として『当たらなかった』と判るまで叫び続けてしまうらしい。

 そんな『サンプリング結果』なんて、煩いから要らんのだが。


「おいっ警備艇、加速してねぇか?」「うわっ、水しぶきがスゲェ」

 聞いた瞬間に舵を更に切っていた。我ながら『ナイス判断』だ。

 多少逃走経路は長くなってしまうが、それも致し方なし。舵の手応えはまだある。ちゃんと曲がっている。

 口笛男はそれから窓の外を見た。敵船との距離角度、そして速さを測る。これなら大丈夫だ。堂々と前方を横切ってやる。

 問題は最接近した瞬間に、何を撃って来るかだけ。


「当たるぅぅぅぅぅぅっ!」「ニャァァァアァアァッ!」

 見てもいないし、既に人に非ずか。それとも本当に猫が?

 口笛男も流石に舳先を通過する瞬間は肩を竦めた。しかし撃って来ない。何もない。見れば警備艇の艦尾から水しぶきが消えている。


『ギュウゥゥッゥンッ!』「向こうはトラブったか。それとも……」

 考えても仕方ないが、それでも『参考』にはなろう。

 警備艇に搭載された『新型推進装置』は、極短時間での稼働しか出来ないと。魚雷から逃れるためにとか、そんな用途。

 だとしたら『今の』は、単なる『脅し』か? 若しくは実験。


「やったっ! 見ろっ振り切ったぞっ!」「ヒィィッ」「見ろって」

 窓辺の二人は完全に『役立たず』だ。何もしてなかったのに、人一倍喜んで。喜びついでに警備艇にアカンベーとかするの止めれ。


「あれって何だ?」「煙?」『シュポンッ! ゴォオォオォッ!』

「ミサイルだっ!」「SSMだろ」「うわっ来るなぁ」「来るだろ」

 ちゃんと突っ込んでいるのに、窓際の二人は気が付かない。

 それもそのはず。またしても口笛男の反応は早かった。

 操縦桿下の『赤いボタン』を素早く押す。それは一見『自爆装置』とも見える、大きなボタンだ。


『シュポンッ!』「何だっ!」「こっちぃ?」「チャフって言うの」

 説明したのに加え、目の前に展開されているにも関わらず、やっぱり何も判っていない。銀色のアルミ板が『これでもか』と広がる。

「どうなんのぉ? どうなんのぉ?」「ナニコレェ?」

 ふと見れば、舵を操作する口笛男が後ろを見ているではないか。

 目が合った口笛男は満面の笑みに。もしかして、大丈夫、なのか?


「効いたら良いなぁ」「!」「!!」

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