表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1514/1520

海底パイプライン(三百二十五)

 冷静に言われてしまった。窓から顔を離し、腕を抱えて考える。

 その様子に驚くのは後にして、二人は争うように窓を覗き込む。頭が当たったが、擦るのは後回しだ。いや、やっぱり痛かったか。


「これ当たるかぁ?」「いや判らん」「こっちはこぉ、向こうg」「おいっ、手は止めr」『パシャーンッ』「おぉおぉ」「うわっ」

 再びグラッと揺れる。今度はジャンプしたような感じに。


「進行方向に撃ち込んで来やがったかぁ。うーん。まずいなぁ」

 口笛男が腕を組んだまま、涼しい顔で立ち尽くしている。だからじゃないが、二人には不思議に思えてならない。


「何がまずいんだ」「まだ外してるんだろ? だよな?」「ん?」

 頭の中で『シミュレーション中』なのか、それとも既に結果が出たのだろうか。両手を腰に当てニッコリと笑う。


「いやぁ。遂に『当てに来た』ってことよ。ドッカーンってねぇ」

 自分が乗っている船に弾が当たるってのに、それを嬉しそうに表現する奴が何処に居る。いやここに居た。別名『ぽやっと星人』が。

 こういう奴が戦場にいると、上官は困ることこの上ない。


「良く冷静で居られるなぁ」「まぁ慣れっこなんでねぇ」「何だよ『慣れっこ』って」「えぇ? 言葉通りですけど?」「えぇえぇ?」

 二人が驚くのも無理はない。実は口笛男、普段は帝政ロシアに向けて、重油を密輸する任務に就いているのだ。

 警告やら砲撃を受けるなんて、日常茶飯事なのである。

 曰く『日本海は俺の庭』を地で行くタイプ。実際は『海』だけど。

 今回は太平洋初進出で、上司より『硫黄島で釣りでもして来い』と言われてやって来たという訳。たも網と浮きを新調して来た。

 帝政ロシアと吉野財閥自衛隊の腕前を比較すると、コッチの方が『撃ち慣れてる感が凄い』と感じる。いやそれはどうなの。


「じゃぁどうすんだよっ!」「五度取り舵にしないと、ドーンッ!」

 そんだけなのか? もう一度窓の外を覗く。さっきより近い。

 どんどん近くなっているので、素人にも『計算し易くなっている』と見えればこそ、『口笛男の言う通り』になると思わざるを得ない。

 つまりこのままだと『ドォォォン』で『バーンッ』である。

 いや『バーンッ』からの『ドォォォン』か。どっちでもイイッ!


「いやダメだろっ!」「だよなぁ。それにこれ以上近くなったら、機銃でも撃って来そうだしなぁ」「えぇ? この距離でぇ?」「放水が先じゃねぇの?」「そんな生温いこと、してくんないでしょ」

 急ぎ二人が窓を覗き込む。今だ距離は二百メートル以上。


『バリバリバリッ!』「うわぁ!」「マジで撃って来やがったっ!」

 水音ではない。今までと違って、何処かに着弾したであろう。尚も生きているのは『警告したからね』を、強制的に解らせるため。


「ほらねぇ。今上に姿を見せたら、遠慮なくハチの巣だと思うよ?」「ざけんなっ!」「何とかしろっ!」「じゃぁそろそろ舵切るかぁ」

 行先は当然舵の前である。そこには一人の男が座り込み、舵を握り締めていた。今まで『このまま持ってろ』と言われたままに。

 口笛男は別に『退け』とも言わないが、自然と『どうぞどうぞ』とならざるを得ない。這いつくばって左舷へと急ぐ。


「こんなモンかぁ」「おぉっ」「大丈夫なんだろうなっ」「さぁ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ