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海底パイプライン(三百二十二)

 エンジンが唸りを上げたのと同時だった。外に出た見張りの一人が直ぐに戻って来たものだから、全員が手を止める。

 手に双眼鏡を持って外に出た。いや、送信係だけが迷っている。


「何処だっ!」「あそこ」「見えねぇ」「あそこだよっ!」

 双眼鏡を覗き込んでいるにも関わらず、裸眼より見えないとは。

「お前いきなり最大望遠にすっからだよ」「えぇ?」「それじゃ見えるモンも見えねえって。貸せぇ」「あぁ俺のぉ」「ウルセェッ!」

 奪い取ったつもりだが、首からぶら下げているものだから、顔も付いて来る。吐く息が耳に掛かって気持ち悪い。キスすんな。

 しかし抵抗はせず。なにしろ『命』が掛かっているのだから。


「見えた。クソッ。島と同化してたのか」「どっち向いてる?」「明らかにこっちに来てんな」「おいおいおい」「おおっと。俺も見る」

 指さしてた男と双眼鏡を覗いた男は、さっさと船室へ。一人残されたのは双眼鏡の持ち主だ。設定を触らないようにして覗き込む。


「ホントだぁ。良く見える。買って良かったなぁ」「こっち来い!」

 双眼鏡に夢中で聞こえないのか、それとも唸るエンジン音のせいか。視野に入った警備艇を良く見ようと、倍率を上げる。

 すると、最初よりグンと大きく見えたではないか。舳先で波を切り裂きながら走る様は、如何にも勇敢でカッコイイ。実に絵になる。

 その雄姿を良く観察すると双眼鏡を外し、口を尖らせた。


「何だ。舳先、別にコッチに向いてないじゃん」「中に入れ馬鹿っ!」

 グイッと掴まれてアワワである。引っ張り込む力に遠慮はない。

『ゴンッ』「イテッ」『バシッ』「そこイテェって」

 入り口で頭をぶつけた所を、さらにチョップされてしまったのだから堪らない。強めの文句を言ってみたが、今度は拳を見せられて黙る。いやはや目も怖いし。


「舳先がどっち向いてたってぇ?」「あっち」「俺達の進行方向だろうがっ!」『バシッ』「イテェってぇ」「追い付かれちまうぞ!」「じゃぁ、逆方向に逃げr」「陸地は何処にあ・る・ん・だ・よっ!」

『あぁ』と首を傾げて見せた。一応は理解したことのアピール。

 納得してくれて良かったのか、それとも呆れたのか。不機嫌そうな顔になって振り返る。そして『以外の奴』が集まって相談だ。


「どうする? もう送信するか?」「危険海域内だぞ?」「でも、会敵してからじゃ遅い」「ちょっと容量多いからなぁ」「編集すれば? 兎が暴れているトコだけでも」「いやぁ時間が」「そんじゃ三号のだけでも送る?」「まぁ、優先順位としては」「三号二号一号の順か」「無駄に4Kなんかにすっから」「オメェは黙ってろ!」

 無線の発信は敵にキャッチされる恐れがある。しかも動画を。

 暗号化されていようものなら、それこそ『謎通信』を理由に奴らが乗り込んで来る確率、非常に高しだ。外国の海洋調査船が、問答無用で轟沈されたのも記憶に新しい。当然奴らは『我関せず』だが。


「向こうの方が明らかに速い」「まぁ、こっちは漁船だしなぁ」

 海面近くの覗き窓からも、既に肉眼でハッキリと見える。

 もう少し近付けば、先ずは発光信号で『停船命令』が発令されるに違いない。そうなったら終わりだ。


「どうすんの?」「やるしかないか」「何を?」「あぁいっちょやるか」「ねぇ何を?」「じゃぁ、送信も始める?」「そうだな。どうせバレちまうなら関係ぇねぇ」「ねぇってb」「黙ってろっ!」

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