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海底パイプライン(三百二十)

 映像で確認出来たのは『映像だけ』である。『撮影者』の方は当然何も写っていない。しかし一号と二号を見比べてみると、確かに一号の方が『ほぼ即死』とも言える状況ではないか。

 この『意味するところ』とは。正直映像だけでは解らない。


「二種類の毒ガスが充満してるってこと?」「少なくともそうなる」「おいおい。嫌な場所だなぁ」「普通、そこまでするかぁ?」

 そんな所に潜入しておいて良く言うよ。顔を顰めているがどっちもどっちだ。互いに普通ではない。


「じゃぁ三号も同じ?」「いや、三号は結構長持ちした」「どれ」

 男は一号二号のファイルを閉じ、三号のファイルを開く。すると自動的に再生が始まった。投入から下に落ちる所までは早送り。

 落ちた先で『犬が怖い』のか、反対方向へ走り出した。


「おぉおぉ、随分揺れるなぁ」「手振れ補正意味無し」「その時点で、俺も酔っぱらって来ちゃってさぁ」「情けねぇ」「良く言うよ」

 録画したのをゆっくり見た方が目には良いだろう。しかし『この先が気になる』ので若干早めに。通路の画がずっと続いていれば。


「おっ、広い場所?」「て言うか、こっちは毒ガスねぇんだな」「そういう場所もある?」「おい。海図あるか?」「ほい」「これ、どっち方面に行ったんだ? 島側? 本州側?」「うーん。本州側かな」

 海図に『手書き赤線』でパイプラインが引かれていた。下調べをしたダイバーが、場所と方位を断片的に調査したものを纏めた結果である。とても正確とは言えないが、今回の映像と照らし合わせれば、少なくとも長さと中間地点について解明されて行くだろう。


「何がある?」「三号落ち着け」「あっ、隅に隠れちまいやがった」

 大の大人が、兎の頭に取り付けた映像を見ながら一喜一憂だ。

 そこで早戻しをして、映り込んだ機器の確認をすることに。見覚えのあるメーカーが映った瞬間に映像を止めた。更に顔を寄せる。


「これ、圧力計だよな」「あぁ。幾つになってる?」「待てよぉ」

 ここからは慎重に。ちょっとづつ動かして『圧力値』を確認だ。

「ガリソンだと低圧?」「あぁ。十から四十だな」「原油だと?」「三十から七十だ。ガリソンより粘度が強いから」「さぁ幾つぅ?」

 さっきから映像を行ったり来たりさせているが、中々メーターが映らない。陰に隠れていたと思ったら、ピョンと出て来るとか。

 また通り過ぎた。直ぐに戻して確認。残念。映ったのは圧力計じゃなかった。いやいや、これで何度目だろうか。兎には是非『画像を早送りすることも考慮して行動しろ』と仕込みたい。無駄だけど。

「実際の圧は管の直径にもよりけりだから、あと長さも関係する」

 この間を繋ぐのに『補足説明』を付け加えるのがやっとだ。

 つまり今の所、圧力計を無事拝めたとしても、何も判らない。


「なぁ。本当に奴らは原油を掘り当てたのかぁ?」「それよそれ」

 つまらなくなってボソッと溢した一言に、一同は呆れている。

 が、それも致し方ない。硫黄島で湧き出しているのは、昔から『ガリソン』と決まっている。当然、管理する吉野財閥に与えられているのは『ガリソンの採掘権』なのであって、原油ではない。

 しかし近年『ガリソンの元が見つかった』とか。いや『噂』だ。

 もし吉野財閥が、裏で原油を採掘していたとしたら許されぬ行為だ。実はその『証拠』もある。それは『重油の購入量が少ない』こと。あれだけの艦船を保有して置きながら、この少なさは無い。

 絶対『自家消費している』に決まっている。許しがたい行為だ。

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