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海底パイプライン(三百十三)

 爆発音がしてから五秒後、一郎が現場と思しき場所に到達した。

 現場にはガラスが飛び散っている。ただそれだけで、焼け跡は見当たらない。するとうずくまっていた小町が立ち上がった。


「耳がキーンニャ」「大丈夫ですか?」「ニャニィ? ニャンにも聞こえニャーイ」「怪我してないですかっ!」「ニャンとかニャァ」

 小町の声が大きい。実は普通にだって喋れるのだが、訳あって普段は声を抑えているだけ。耳が遠くなってしまい、自然と声が大きくなった模様。一郎の方が『誰か来ないか』と気にしている。


「爆弾だったんですか?」「窓の外に捨てた。随分近かったから、外壁が焦げたかも。後でペンキ塗り直しかもしれんニャァ」

 会話もイマイチ噛み合っていない。しかし一郎は窓の外を見た。

「あぁ、大分逝っちゃってますねぇ」「どれ見せるニャ」

 外壁には白い塗料が塗られていたが、下地まで見えている箇所も。

「結構な範囲で真っ黒ですよ」「小町を持ち上げるニャ」「ヘイ」

 余程気になるのか、小町が一郎の横でジタバタしている。シャツを掴まれてグイッとやられたことで、抱き抱えて窓の外を見せた。

 確かに真っ黒である。これはお頭に怒られそう。又は始末書か。


「小町と一緒ニャ」「洗えばニャンとかなりますかねぇ?」

「あっ、移った」「いやすいません。つい」「真似は良くニャイ」

 被害状況の確認と今後についての検討は放置して笑う。まぁ誰も怪我しなかったんだし、無事なら良いではないか。小町を降ろす。


「しかし、良く『爆弾だ』って判りましたねぇ」「ニャァ。それは『ピピピッ』って音がしたのニャ」「へぇ。全然判んなかったです」「三郎の『色違い』がヒントにニャってニャァ。後で褒めるニャ」

 小町も犬の首輪が『NJS製』と判った時点で、かなり怪しいと思っていた。どうせ特別顧問の二人が設計製造した物に違いないと。

 実際硫黄島でも導入された機器は数あれど、およそ九十七%は『不良品』で返品になっている。いや、元々『試作品』と言う名の不良品を送り付けているのか、それとも『折角作ったから』と失敗作を押し付けられているのかは不明。まぁ百二十%の確率でその両方か。


「あと一個あるって言ってましたよね?」「知らんがニャァ……」

 そうだ。六番隊の奴ら、今頃爆死しているかもしれない。ざまぁ。

 仮に『まだ大丈夫』だとしても、同じように『カメラを塞ぐ』や『無理して解体』等、不測の事態になっていれば、爆発へのカウントダウンが始まる恐れも。小町は眉間にしわを寄せた。口もへの字。

「迷惑だから現地で処分するよう、お頭に言うニャ」「ですねぇ」

 すると階下から大勢の足音が聞こえて来た。金属が擦れる音も。

 どうやら部下達がフル装備で来たか。爆発音がしたことで『敵襲』と判断したのだろう。気配を感じた所で足音が途絶える。

 きっと今頃、ハンドサインで『クリアァッ!』とやっている。


『ダダダッ』「止まれっ! 小町隊長の無事を確認っ!」

 先頭を走って来たのは三郎だった。狭い階段を一体何人で上がって来たのやら。『押すな』『止まるな』とおしくらまんじゅうだ。


『ボソボソ』「ご苦労。大丈夫。爆弾は無事処理した」「ハッ!」

 小町が指さした窓から三郎が顔を出す。当然、苦い顔だ。

「結構やられましたねぇ」『ボソボソ』「何とか間に合ったのは三郎のお陰だ」「いえいえ。無事で何よりです」「褒美に『後片付けの権利』をお前に譲ろう」「えぇえぇ、そりゃぁねぇっすよぉおぉ」

 勝手に『ご褒美が支給された』と見えて、小町が一郎の足を踏む。

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