表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1500/1525

海底パイプライン(三百十二)

 驚くのも無理はない。お頭に言われて、犬の死骸を三番隊に持ち込んだらこの有様。表には見てはいけないビニール袋があって、ツーンとした匂いが漂う。すると三郎が口の周りを拭きながら処置室に戻って来た。トイレへ行ったにも関わらず。手は洗ったのか?

 開けっ放しのドアを通った瞬間『ギョッ』としている。


「どうした?」「それはこっちが知りたいです」

 三郎に聞かれて答えた677の気持ちも判る。早いトコ『犬の死骸』なんて手放したい。そう言えば632が先に来ていると。

 見渡しても全員顔が真っ黒なので、判らないと言えば判らない。しかし『677の目線』と合うのが632のはず。六番隊の隊員は皆背が低いからって、いたいた。何だ。『隊長の近く』に陣取っているとは、なかなかやるじゃないか。

 677はピョコピョコ会釈しながら細長い机を回り込む。


『ボソボソ』「何だまた持って来たのか」「ハイ。あと一匹居ます」

 遠慮なく置く。すると机の上に留まっていた黒い煙が巻き上げられた。小町を始め全員が顔を背け、手をパタパタと動かす。

 置いた本人は放り投げたようなもので、被害を免れた構図だ。

 ヒンシュクを買っているようだが構うものか。別に子犬なので重たくもないが、許可を得るまで待つ必要も無かろう。大きな机の上に、スペースがあるのだから。長居する理由も無ければつもりも無い。無駄な会話なんて遠慮して、ここはサッサと引き揚げだ。

「おい、632も来い。今、皆で追い掛けてるから」「あぁえぇ?」

 632の腕をポンと叩いたら、手が汚れてしまったではないか。

 どうやら七班が向かった『P3』は、侵入者ならぬ『侵入犬』が走り回っているようだ。それはマズイんでないかい?

「すいません。呼ばれたので失礼します」「おぅ。行け行けっ!」

 メスを持った小町を見て、632は慌ててお辞儀していた。こうなっては一郎も送り出すしかない。寧ろ追い払うように手を振る。

 六番隊の二人はお辞儀してシレっと処置室を出て行った。


『ボソボソ』「おい三郎。出番だ」「えぇえぇ。また俺っすかぁ?」

 情けない返事だ。人を殺すのは平気で、犬から首輪を外すのがそんなに嫌なのか。しかし真っ黒になっても、小町の目が怖い。

 いや今の方が怖いか。無言のまま『ほれ』とメスを振られては、三郎も受け取らざるを得ない。しかし何をどうしたらこうなる?

「もしかして部屋中真っ黒なのって、首輪が関係ありますぅ?」

「他に何が関係しているんだ」「あっ、やっぱり……。ですよね」

 さっきも手掛けた経験から言って、今度の首輪はちょっと違う。

 もし『只の色違い』であれば、失敗しても『真っ黒になるだけ』かもしれない。しかし前回の首輪が『黒』で、今度の首輪が『赤』なのが気になる。チョットだけだけど、気になって仕方がない。

「大丈夫ですかね?」「何がだ。早くしろ」「でも、何か色違い気になりません?」「市販品らしいから色違いだろ」「いやぁでもぉ」

 煮え切らない三郎に一郎はイライラする。しかし実は『隠れ犬派』の一郎は、決してやりたくはない。あくまでも顎で指示するのみ。


『ボソボソ』「もう良い。寄越せ」「えっあぁハイ」

 スッと差し出したメスだが、小町が所望したのは『犬の方』であった。ムンズと掴んでそのまま外へ出て行く。慌てたのは一郎だ。

 追い掛けて行くと三番隊の詰所を出て走り始める。向かうは何故か階段。理由も判らず追い掛けるが、小町の方が断然早い。

 足音をだけを残し、姿が見えなくなってしまった。それでも追う。


『ドガァアァアァアァンッ!』「なっ! 隊長ぉおぉっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ