海底パイプライン(三百四)
隊員達は気が気でない。爆発がどの程度か判らないし、一番近くにいるのが小町隊長自身だからだ。これでは守れない。
すると小町が首輪を覗き込む。『ココが繋ぎ目デス』の所を。
メスの先で慎重に毛を倒す。裏側まで良く見て。が、ダメらしい。無表情なので良く判らないが。今度は反対側へ。『ジィィィッ』と良く見ている。当然こちらからも毛を倒し、結局繋ぎ目を一周分覗き込んだ。相変わらず無表情なまま元に戻る。
『ボソボソ』「外れそうにない。えっ、どうするんですか?」
対面の三郎が覗き込む。横から出て来たのは四郎で隣は七江。
皆『戦闘』だけでなく『毒物』と『ギミック』のエキスパートである。一郎が見に行かないのは怖いから。しかし今は『隊長の通訳に専念している体』を装い、シレっと他の者に任せていた。賢い。
ここに居る誰もが、力任せに引き千切れば外すことも出来よう。しかしそれをしたら、引き千切った手が千切れてしまう可能性が。そうなるともう『あんなこと』や『こんなこと』が出来なくなってしまうではないか。それだけは避けたい。全力で避けたい。
『ボソボソ』「えぇえぇっ! 俺がですかっ!」
首輪を見ていた班長達が一斉に顔を上げた。
『ざまぁ。死んで償え』『今こそ逝ってろ』『流石隊長良く見てる』
笑顔。満面の笑みである。言葉にこそ出さないが、誰も心配などしていないのは確か。そして全員が『自分じゃなくて良かった』と思っている。実は皆それぞれ一郎には恨みがあり、いつか仕返しがしたいと思っていたのだ。正に今である。
しかも『隊長命令』と来れば拒否権なんてものは無い。死確定。
『ボソボソ』「三郎電話用意しろ」「電話?」「早くしろ」「はい」
一郎が死んだら『ナンバー2は俺だ』と、思わずにやける三郎。
三郎が『一郎からされた嫌がらせ』は、新品の歯磨き粉に毒を入れられたことだ。お陰で歯を磨く度に舌がビリビリして堪らない。『あと何回使えば無くなる』と、思う度に頭が痛くなる。
前にやられたときはここまで酷くなかった。きっと新毒のせいだ。
「じゃぁ、サクッと行かせて頂きます」『えっ?』『そっち?』
四郎と七江は思わず顔を上げた。すると小町隊長は既に横を向いているではないか。いや一郎、お前もかよ。前を見rウゲーッ。
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「電話持って来ましtオエェエェェッ」
(お花畑の映像と優しいメロディが流れています)
『ボソボソ』「特別顧問を呼び出すんですか? 電話で?」
何事も無かったように机の上は首輪だけになっていた。あと電話。
リバースしてしまった三郎だけが電話を置いて席を外している。
『ボソボソ』「私が掛けるって隊長、大丈夫なんですか?」
一郎は小町隊長に恐る恐る受話器を渡した。当然のように黒電話。
実は『困ったときの相談窓口』と言うのが設置されているのだ。小町が受話器を手にしたのだが、皆心配で堪らない。ダイヤル9。
『ボソボソ』(こくり)『ボソボソ』(こくり)『ボソボソ』
何も聞こえないが、ちゃんと交換台と会話して『特別顧問』に発信出来たようだ。小町が気を付けの姿勢になったのを見れば判る。
『ハイッ日本情報処理株式会社AV事業部長高田席でご』『ガチャッ』
知らない部署の知らない奴が電話に出て、小町は受話器を置いた。




