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海底パイプライン(三百)

 穏やかに警告してやると、満は恥ずかしそうに頷いた。

 正直ホッとしたのだろう。決して『反省』なんてしてそうにないが、罠に気を遣うことが無ければ気は楽になるだろう。


『ゴンッ』「イテッ。あっ、ちきしょう」

 632はセキュリティーゲートにぶつかっていた。

 と言っても、モロにぶつかった訳じゃない。何となく『そろそろだよなぁ』と思っていたのは確かで、歩く速度を緩めていた。

 故に、階段を踏み外した程度の衝撃だ。口で言う程痛くはない。


「何やってんですかぁ。ちゃんと前を見ないからですよぉ」

 鉄の扉に衝突した瞬間の顔ったら、明らかに怯えていた。

 存在しない『何か』に当たったような。ビクっとしちゃって。が、直ぐに前を向いてしまった632の顔を、満はそれ以上見てはいない。あの様子じゃ、きっと凄いしかめっ面であろう。ククク。


「煩ぇなぁ。お前のせいだろうがぁ」「えぇ? 知りませんよぉ」

 満と会話するために振り返っていたのだから、言い分には一理ある。しかしそれは言い訳に過ぎない。寧ろ満は呆れている。

 自分でも判っているからこそ、632もそれ以上は言わない。それより仕事だ。早い所セキュリティゲートを通過して、小町隊長の所へ行かなければ。万が一船に乗り遅れたら、警備対象となる海上の立坑入り口まで泳いで行かされる羽目になる。今度は銃を持って。


『ピッ。認証しました』『ウィィーン』「お前もピッてやって来い」

 この世界ではお馴染みの『読み取り機』だ。左耳を読み取り機に近付け、生体チップを読み込ませる。そして生体チップが読み込めるのは『生きている証』なのだが、硫黄島は一応顔認証も行う。

 面倒ではあるが、慣れてしまえばどうと言うことは無い。


『ブーッ。認証出来ません』「あれ?」『何やってんだっ!』

 扉の向こうにもランプがあって、向こう側でも失敗したのが判る。

『ブーッ。認証出来ません』「何だ?」『おい、早くしろっ!』

 二度も蹴られやがって。これは顔認証の画像登録時に、目でも瞑ったか? 又は、今瞑ったとか。顔認証時は普通『目を開ける』だろ。

 どんな田舎もんか。又は随分と間抜けな野郎だ。見本を示してやったのに、その真似すら出来ないとは。あぁ、置いて行きたい。

『ブーッ。認証出来ません』「あれぇ? 何でですかねぇ」

「知るかっ! もう良い。お前は詰所に戻ってろっ!」

 こっちが知りたいわ。普通コントロールルームに着いたら、横の警備室で『顔認証登録』をするだろうが。何か? さっき登録したのと『違う顔』を持って来たとか? じゃぁお前『誰』なんだよ。

 632は知らない。まさか満が『未登録』であることを。


『ブーッ。認証出来ません』「やっぱりダメかぁ。どうなってんの」

 満は諦めて来た道を引き返す。コントロールルームへ戻ることにしたのだ。当然先輩の助言は聞いていない。だって『壁の向こう』だし。それに、ちゃんと聞こえなかったのは俺のせいじゃない。

 一方632は、もう三番隊詰所へと向かっていた。満の心配なんてしている暇は無い。当然『指示通りに戻っている』と思っている。

 我らが六番隊詰所は、反対側のセキュリティーゲート手前を『箸箸茶碗箸茶碗』と曲がった所。左利きでもない限り辿り着ける。

 しかし632はこれも知らない。まさか満が『禁断の四回連続エラー』をやっちまった事実を。島で働く者なら有り得ない行為だ。


「カラコンがいけなかったのかなぁ」『パカンッ』「うわぁあぁぁ」

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