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海底パイプライン(二百九十六)

 三咲は『プーちゃん』の数値を見ていた。大丈夫。問題ない。

 満を上に戻したのは『弾避け』としても使い道が無くなったからだ。親切でも思いやりでも何でもない。ぶっちゃけ迷惑だから。


『カチッ』『ありゃ何だ?』『人じゃねぇな』『動物か?』

 近付く前に『現在の状況』を整理だ。三咲は姿勢を低くしたまま、懐中電灯で管理通路のあちらこちらを照らす。

 円形通路の真ん中に、ガリソンのパイプラインが通っている。上に隠れる奴は居ないとして、隠れるなら下か反対側。パイプラインの下から覗き見て異常が無いか確認。『足』なんか見えたら最悪だ。


『良し。行くぞ』『了解』『後ろ異常なし。了解』『カンカンカン』

 静かに移動を始めた所で、梯子を登る音が響き渡る。三人は思わず苦笑いだ。やっぱりココで絞めちゃった方が良かったかも。

『カンカンカガーン』「イテェエェエェッ」『死ねよ』『殺そう』

 遠ざかる音がやっと小さくなったと思ったら、響く叫び声。今度は苦笑いも無い。どんなハンドサインで語り合ったのかは後で考えるとして、残された三人は大きく頷いた。そして前進。

 三咲は遺物から少し離れた所で立ち止まり、もう一度懐中電灯を点けた。一度遠くを照らして誰も居ないことを確認し、改めて『転がっている何か』を照らし出す。それは小犬だ。


『死んでるな』『まだ暖かい』『報告に戻るか?』『いや良い。上も判ってるだろうから、反対側にも誰か向かわせているだろう』

 これまたハンドサインで。別に『手話』って訳でもないが、意訳である。三咲は頭部に仕掛けられたカメラに光を当てる。

 顔の前に構えた懐中電灯の光量を一気に上げてだ。かなり眩しい。


『レンズにテープを貼れ』『了解』『カメラだけ先に回収する?』

 632がテープを準備している間に633が問う。しかし三咲は首輪を指さして首を振った。633は顔を床に近付けて観察だ。

 カメラから伸びた線が首輪まで繋がっているではないか。


『何だこれ』『触るな。テープ貼ってからだ』『OKこれで良し』

 カメラ自体は民生品だが魚眼レンズである。つまり三百六十度の撮影が可能。そして『改造』が加えられていると思って良い。

 首輪型の『何か』は『バッテリー』なのか『無線の中継器』なのか。はたまた『爆発物』なのかも知れない。いずれにしろ碌なモンじゃねぇのは確かだ。犬も迷惑そうに白目を剥いてくたばっている。


『これはカメラを外した瞬間に、何かが起きるかもしれないなぁ』

 三咲の意見に他の二人も賛成だ。こんなちっさい犬が一匹で太平洋を泳いで来た末に、カメラを装備してハッチを開け、パイプラインに侵入する訳が無い。少なくとも体力を温存させようと、咥えて運んで来たであろう『親犬』がいるはずだ。

 それに『一匹』とは限らない。大体犬は一度の出産で何匹も生む。ならば同じハッチから『向こう』と『コッチ』と『あっち』と『そっち』にだって、送り込んだ可能性は捨てきれない。

 今頃親は、送られて来た映像を見て逃げ出しているかも? 屑親。

『ナムナム。回収だ』『可愛そうに。了解』『アーメン。ガサゴソ』

 無線を遮断することが出来る加工を施した袋を取り出すと、633は小犬を頭から放り込む。袋の口をキュッと結んで一丁上がり。

 三咲はもう一度辺りを照らし出すと周囲を確認。振り返って『戻ろう』と指示を出す。今度は三咲が殿となって引き上げだ。


 しかし誰も知らなかった。死んでいたのが()()()()であることを。

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