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海底パイプライン(二百八十九)

「隊長ぉ……」「おいお前ら、出番だぞ。支度しろぉ」「へーい」

 隊長に別の名前をお願いしようとしたピーだが、溜まり場に着いてしまった。隊長の耳には届いていない。

 待機していた六番隊の連中がわちゃわちゃ動き出すと、それは一見して幼稚園のよう。いや、それは言い過ぎか。

 小学一年生の教室を彷彿とさせるではないか。

 何? 大して変わってないだって? そんなことは無いぞ。

 背中に背負った大きな荷物がまるで『ランドセル』のようだし、実際の小学一年生と比較しても『比率的には同等』と判るはず。

 隊長は集合までの時間を特に指定しなかったが、その必要が無い位に手際が良かった。一人一人に役割があり用具も異なっている。


「隊長、カナリヤが居ませんが? 如何いたしましょう?」

 不安げに言いながら、空っぽの鳥籠を隊長の前に差し出した。

 見れば『ピーちゃん』の文字が。白いプラスティックの板に、黒い文字で刻まれたネームプレートだ。書体も丸文字で凄く可愛い。

 鳥籠の方も全体的に可愛いさをアピールしたもので丸い円筒形。上部の吊るし金具に向けて円錐状となっている。そこに、持っている者が可愛く見えてしまう程の飾りが付いた、超高級品だ。

 しかし残念なことに、上下するであろう出入口が外れている。加えて周りの部材が、ひん曲がってしまっているではないか。

 どう見ても壊れているの一言。それ以外に言いようが無い。


「安心しろ。ちゃんと手配した。ほら、こっち来い」「はい」

「今日からこいつがピーちゃんだ」「よろしくお願いします?」

 隊員の顔が明るくなったのも束の間。紹介された『カナリヤ』が、自分より大きな生き物であったのに驚き、怪訝な表情へと変わる。

 そりゃそうだ。動物図鑑を幾ら捲った所で掲載されているハズが無い。鳥籠とピーちゃんを見比べたってどちらのサイズも変化無し。だから幾ら『入り口が広くなっている』とは言え、何処からだって入れない。どうすりゃ良いのと、疑問は増すばかりだ。

「あのぉ? 寝床はどうします?」「あぁ、そうだなぁ」

 するとペンを取った勝也が歩み出て、ネームプレートを覗き込む。


『キュッ』「これで良いだろう。なっ? 可愛がってやってくれ」

 そこにあった『二代目』の文字に一本足して、不格好な『三代目』としたではないか。この調子なら『四代目』『五代目』と続いたとて、何とか改竄してくれるに違いない。


「ピーちゃん。お前の『個室』だぁ。良かったなぁ」「えぇはい」

 満面の笑みである。そこで『ピーちゃん困っちゃう』とは言えない。どう頑張っても『枕』が精々で、壊せば殺されるんだろうし。


「七番スポットでアラート出てっから」「またですかぁ?」「あぁ」「あそこって、侵入し易いんですかねぇ」「さぁなぁ。俺は『侵入しよう』なんて気にはならんがなぁ」「そりゃそうですよぉ」「ガスが充満してるって、知ってるんですからぁ」「えへ。ばれたぁ?」

 どうやら今から行く所は、侵入者にとって『アンラッキーセブン』な場所らしい。ピーは一抹の不安を感じるが、明るい雰囲気に『俺には関係ない』と思っている。思おうと絶賛努力中。


「じゃぁ62、三人で点検して来てくれ」「ハイッ。行くぞ2と3」

 どうやら六番隊・第二班の班長である62と、二人の部下622と623がパイプラインに入るらしい。ピーは自分を指さした。


「ほらピーちゃん、怖くないからおいでぇ。籠は……、要らねぇか」

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