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海底パイプライン(二百八十七)

 お頭の意外な一言で、余りモノは地下送りになったようだ。

 今到着した新人は、お頭の後頭部を見て何を思うか。眩しいとか言っている暇は無い筈だ。視線が洋子へ。一歩前に出て魅せた『笑み』が、まさか自分へ向けられた『歓迎の意味』とも知らずに。


「諸k」「あっ、そうだ勝也」「ハイッ」「アラートの場所頼むわ」

 洋子の挨拶へ割り込むようにお頭の声。どうもタイミングが悪い。

 思わず京子も笑っている。さっき一番隊隊長の隆司に『誰か行かせろ』と指示したのはお頭なのに、自分が勝手に指示したからだ。

 こんな奴が五十嵐家のお頭を名乗っていることも、京子がのらりくらりと五十嵐家を躱す要因でもあろうか。

 実戦では兎も角、訓練なら。吉野財閥の柔道大会で京子は無敗である。連勝記録が途絶えたのは『ガリソン施設の警備』に配置転換されたのが理由だ。本当の強者はそういう大会には出て来ない。


「諸君っ!」「詳しくはこっちだ。案内する」「ヘーイ」『もぉ』

 今度は隆司が洋子の挨拶に割り込んで来た。この真面目人間め。

 洋子はお頭のときとは違って、あからさまに不満気な顔。別にパイプラインのアラートなんて、そんな急がなくても良いだろうに。

 勝也を手招きして技師の方へ一緒に行くと言うのか。だから隆司は糞真面目と言われるのだ。真面目過ぎて逆に人望が無い。

 どうせアラートなんて、また『侵入者』に決まっているではないか。殺しゃ良いのだ殺せば。それより今は新人への挨拶をさせろと。

 他の隊長達は『興味ありませーん』と立ち去って行く。これで洋子の隊に『なるかも』の不安が『なっちまった』と確信に変わる。

 三度目にして挨拶は無事始まったが、特に詳しい描写は無い。新人達の表情は暗く、会社に対する不満が溢れんばかりだ。色々言いたいこともある。表情を見れば明らか。社食にプリンを置けだろ?

 しかしそれは、社会人なら皆経験すること。大体、好きな会社に入った時点で『運を使い切った』と言える。だから希望する部署に配属されなかったからと言って何だ。プリンの前に先ずは社食だ。


「ここでアラートが出てるんだが」「あぁこれね。大丈夫っすよ」

 隆司が指さした場所を一目見て、パイプラインに詳しい勝也は『何だ』である。何故ならそこは『トラップピット』だったからだ。

 それでもアラートが出た以上、対処しない訳にはいかない。て言うか『道夫を呼んだ方が良いのでは』とさえ思う。

 今はもがき苦しみ、のた打ち回っている頃だ。着いた頃には、どうせ死んでいる。まぁ、仕方ない。行くか。それが仕事だし。

「何があるか判らないから、警戒して行くんだぞ」「ヘイヘイ」

 隊長の間にも一応序列はある。当然一番隊である隆司の方が上。

 しかし反抗的な態度を理由に、隆司が制裁だの粛清だのを加えていてはキリが無い。だったら文句を言われないよう、自分が強くなれば良いだけである。五十嵐家の面々は強い奴になびくのだから。


「何があるか、大体判ってるんで」「カメラも無いのにぃ?」

 勝也は答えない。隆司はちょこっと頭が良いから『コントロールセンターの警備』に抜擢されただけ。そう思っているのだ。

 実力の程は大差ない。戦えば自分にだって勝機は有ると思うし、最初から負けるとも思っていない。決して『馬鹿にしている』訳でも無いのだ。現に今『背中を見せている』が、警戒は怠らない。

 仮に隆司本人が『俺を馬鹿にしているのか!』と聞いて来たら、そのときも『無言』を貫き通す所存だ。


「カナリヤはどいつだぁ? お前か?」「えっ」「あのぉ俺です」

 どうやら勝也は『飼っているカナリヤの区別』も付かないらしい。

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