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海底パイプライン(二百八十三)

「あのぉ、すいません。『コレ』って、交換じゃないんですかぁ?」

 五番目に到着した奴が、誰と無く聞いてみた。しかし反応が鈍い。

 多分だが、居並ぶ面々が隊長なのだろう。『隊長だ』と偉ぶっていた洋子が、末席に控えているのも確認済みである。

 その頃四番目の野郎は、京子の胸元に夢中であった。疲れたのか、頭の上にあった両手だが今は腕組み。するとどうだろう。

 ただでさえ胸元が開いているのに、溢れんばかりではないか。今まで写真でやり繰りして来た身にしてみれば、これは堪らん。


「またぁ? 何と交換なの?」「えっ」「それ俺も思った」「は?」

 聞かれて疑問を呈したのは道夫と勝也だ。特に道夫は、貰ったら二本目だし、だったらこれ以上採用したくない。一方の勝也は『忘年会の出し物に使えるかな?』位には思っている。売店でサンプルは見た覚えが。しかしよく考えれば、今年の新人全員が保持しているのだとしたら、既に一本キープ済ではないか。じゃぁ要らん。


『ボソボソ』「家の毒を、そんな玩具と交換する訳には行かない」

「それさぁ『武器としての価値』あると思う?」「えっ違うんですか?」「要らねぇの?」「えっ、何々? 要らないって何が?」

 慌てる新人達を含め、隊長達も洋子の方を見ていた。

 しかし洋子は真顔で『何のことやら』で首を傾げ、挙句肩を竦めると、両掌を上にして上げやがったではないか。ふざけた女だ。


「嘘付いたのか?」「おい」「俺達を騙しやがって」「おぉい」

 非難囂々とはこのことである。ナイフを取り合って血だらけになっている奴らも加わって、一触即発の雰囲気に。

 が、しかし。洋子に食って掛かる奴は当然皆無だ。口だけである。

 実力はおろか、根性さえ備わっていない。ここは洋子の悪行を他の隊長に晒し上げ、より強い者からの粛清を期待してのこと。

 これを他力本願と言わずんば何と呼ぶ。


「お前らっ、俺の質問に答えねぇかっ!」「!」「!」「!」「!」

 聞こえる方のブツクサを言っている奴。五番隊隊長の雅人が声を荒げた。新人達が驚いて振り返るが、何を聞かれたのかは勿論、お怒りの理由についても判らない。ついでに言うと、命が幾つあったら『この場を逃れられるか』すらも不明だ。引くのは血の気から。


「俺を無視するとは良い度胸だなっ! えぇえぇ?」「……」

 都合が悪くなればダンマリを決め込む。『壇真理』とか可愛らしい感じで、かつ普通に居そうな女の子の名前だが、この『ダンマリ』は全然可愛くも何ともない。寧ろ『逃げの一手』と『責任回避』の合わせ技のようにしか思えない。これでは怒りが増すばかりだ。


「俺は『そいつ』にぃ、武・器・と・し・て・の・価・値・が・有・る・の・かっ・て、聞・い・て・ん・のっ!」「!」「!」「!」

 見た目に違わず大きな声が出せるではないか。流石は戦闘狂が集う五番隊である。訓練ではいつも『弾切れ後』からが本番と心得ている奴らだ。つまりナイフ戦を含む、素手による戦闘が得意。

 当然、売店に売られているナイフだって全種類購入し、その『活かし方』について日夜研究することを怠らない。ナイフは友達はものだ。


「一応あると思います」「ほう。良く言った。お前も思うのか?」「はい」「お前は?」「握力が有ればロック出来るらしいのでぇ」「良く調べたな。判った」「……あのぉ」「良いぞ。認めよう!」

 あれ程怒っていた雅人が、やけに『にっこり』と笑ったではないか。申し訳ないが、傍目にも『何かある』としか思えない。

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