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海底パイプライン(二百八十)

「すいません。それは……無理な気が、します……」

 新人は思い出す。洋子が『七番隊がお勧め』と言っていたことを。

 しかしそれは無理。そうバンバン人を殺すような上司の下では、安心して働けないし、多分労働何とか法の第何条かに違反している。

 大体今まで『人を傷つけること』について、何の躊躇も躊躇いもなく、『真っ直ぐな生活』をしていた者にとって、自分を肉体的にも精神的にも、そして社会的にも傷つけるような事態は耐えがたい。

 世の中自分を中心に回っているのだから、例え地球の自転軸が、公転面から見て『花模様』になろうと、自分だけは安穏と生き抜くために、寧ろ世界が一丸となり、率先して努力しなければならない。

 大日本帝国憲法なんて第一条しか覚えてはいないが、後ろの方にきっと書いてあるに違いない。そう信じている。我を救い給え。


「じゃぁ、六番隊でどう? 何かパイプラインで起きたみたいだし」

 良かった。祈りが通じたのか、お咎めは無かった。

 そうだ。そもそも『命令を蹴った』のではない。ボソッと呟いた一言に、二番隊の隊長様が反応しただけなのだ。

 洋子より美人なのだから、性格だって美しいに違いない。


「家はガタイが良いのはダメ。狭い所に入るからさぁ」「あら」

 にこやかに断られてしまう。新人は互いの身長を確認。すると、あらまどうしましょう。『一番小さい奴』がお断りを食った今、男の中で一番『勝てるかも』と思っていた隊は望み薄ではないか。


「無理だってさ。ごめんね」「いえ、とんでもございません」

 ほら。やっぱり洋子より『良い人』ではないか。しかし、新人を採用する意思が無ければ、同じ位興味の方も無いのだろう。

 再び両手を頭の上に乗せ、モニターの方を見始めてしまった。


「じゃぁ、一番目に来たの家で良い?」『ボソボソ』「構わない」

 はぁ? 今のは何だぁ? 『腹話術』なら知っているが、喋らない人形の代りに男が喋ったぞ? 何が起こっている?

「彼ってそっちの好みじゃないっしょ?」『ボソボソ』「臭い。何日風呂に入って無いの? 近付かないで。それに頭も悪そうで無理」

 ちょっと待って! 今の口振りで、そんなに長いセリフを喋ってた? 『ボソボソ』って、一言二言喋っただけだよね?


「じゃぁ君。四番隊で」「有難うございます。宜しくお願いします」

 少々混乱こそしたが、幾つかの情報は得た。先ず第一に、お人形の隣に立っている男は『隊長』ではない。そして、体がごつくて温厚そうな男は四番隊であると。成程。するってぇと、二と四の間にあるのは確か『三』だったはず。何だって? あのお人形さんと、大男では、お人形さんの方が強いの? マジで? あっ思い出した。

 大男は、さっき『死体処理』をしていた奴ではないか。ウゲーッ。


「こちらこそ。宜しく頼むねって、ナニコレ?」「えっ?」

 道夫が指さしたのは、新人が両手で差し出した訓練用ナイフだ。

 多分『差し上げます』の意図は判るが、こんなモン正直要らない。

 しかし、驚いたのは寧ろ新人の方。顔を上げて道夫の方を見たら、道夫の指先はナイフを指し続けたまま顔が横を向いている。

 視線の先を追えば、それは当然のことながら洋子なのであった。


「さぁ。あげるって言うんだから、貰っとけばぁ?」「えぇえぇ」

 今の一言で新人の『殺意』が、果たしてどの程度まで上昇したのかは判らない。しかし、差し出されたナイフを道夫に取り上げられてしまっては、ナイフで襲い掛かることなんて不可能だ。

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