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海底パイプライン(二百七十八)

『ボソボソ』「この匂いは加齢臭かも」「ちょっと待ってよぉ。んな訳ないでしょぉ。高かったんだから」『ボソボソ』「ぼられたな」

 小町は無表情のまま。その分なのか、副隊長の方がニヤリと笑って補足する。しかしこの場合、飽くまでも控え目に。

 道夫は耳が良い。実際に聞こえた方に目を向ける癖があるからだ。ギロリと睨まれれば身も凍る。いや、とばっちりは勘弁して欲しい。


「大丈夫。道夫さんは『血の匂い』しかしないから」「おいおい。それを消すためにだなぁ、高いコロンを買っているんだろぅ……」

 合流した洋子が肩を竦める。これで隊長が全員集合だ。


『所長、浮島三号に注水されています』『そんな予定は無いぞ?』

 遠くで白衣の技術者達が集まっていた。そこから聞こえて来る。

 その後ろに控えているのは、お頭と一番隊隊長の隆司だ。受け持ち場所はコントロールルームだが、何をどうやっているのかは、大体しか知らない。今は遠巻きにモニターを眺めている。

 一度だけ『ビィィッ』と鳴ったアラート音は直ぐに消された。今は静かで、いや、技術者のガヤガヤした声が聞こえて来るだけだ。

 どうやらパイプライン施設に『問題』が発生したようで、その原因究明に、急遽呼ばれてのこと。まぁ、あの様子では軽い部類だろうし、そもそも一番隊に新人如きが入隊出来る訳もなく。


『お頭、後で誰かに見に行って貰えるかね?』『はい。隆司、誰かに行かせろ』『承知しました』『私は専門外だから勘弁してよねぇ』

 最後の甲高い声は女だ。笑いながら両手を上げ、再び頭の上で組む。ただ珍しそうに眺めているだけで、実に頼りない。

 見れば半径五メートル以内に『女』は彼女一人。白服も含めて。

 つまり『局所的紅一点状態』なのだが、決して『華』とはなっていないのが不思議だ。腕を上げた瞬間、胸だって上下に揺れた。ご覧の通りスタイル抜群で、その上別嬪さんであるにも関わらず。

 寧ろ周りからは『お近づきにはなりたくない』と、敢えて逆の反応を引き出す実力を兼ね備えて。当然声の主が『警備担当』と知っていてもこの有様か。誰も口を挟まないし、目すらも合わせない。


『じゃぁ、何しに来たんだよ』『そのナイフは只の飾りかぁ?』

 これ位は思っても許されるだろう。しかし、そうではなかった。

 目を見て見透かされれば、それは言ったも同義。命が無い。実際去年は、何か言った白衣の新人が三人消えたし。厳重注意だ。


『だったら新人でも見て来いよ』『へいへい。判りましたよぉ♪』

 一番隊の隆司に言われて、渋々歩き出した。そもそも『モニター前』には興味本位で来ている。『仕事に戻れ』と言われたら致し方ない。つまんなくても、仕事は仕事だ。


「こっちとは求める人材が違うから、使えないんだよねぇ」

 おい。聞こえてるぞ。二番隊隊長の五所川原京子は、普段海底パイプラインの終端となる『川崎側の施設』にいる。だから五十嵐家が牛耳っている硫黄島の方には、こんなときしか姿を現さない。

 京子に言わせれば迷惑な話だ。暗部の『募集方法の都合上』と言えなくもない。だから、止む無く硫黄島くんだりまで来てやっている。と、顔に現れていた。お頭にだって遠慮が無いのが実情だ。

 因みに五所川原家は、五十嵐家と同様『吉野財閥暗部』を構成する一族である。暗部として作戦の指揮系統には入っているが、『家の流儀』については知らぬ存ぜぬを決め込むのが暗黙の了解だ。

 当然『五十嵐家のルール』など気にはしないし、気に入らない奴が居たら『必ず潰す』のがモットー。それ相応の実力はある。

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