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海底パイプライン(二百七十四)

「判ったかお前らっ!」「……」「判ったかと聞いているっ!」

「ハイッ!」「ハイッ!」「ハイッ!」「へぇい」「ハイッ!」

 その場にいた全員が返事をしたことにしておこう。

 口調も変え、気合を入れていた洋子だが時計を見て態度が変わる。


「あっ、そろそろ時間かしら。じゃぁ、試験はこれで終わりねぇ」

 スケジュールも何も聞いていない。そもそも、さっき『間違えてナイフ訓練』を始めたのではなかったか? 随分といい加減だな。

 すると水谷がスッと手を上げる。どうせクイズで正解したご褒美が欲しいとか、そう言うことだろう。調子に乗りやがって。


「あのぉ、『試験が終わり』と言うのは?」「んん? あぁ『適性検査』ってやつをやっていたと思ってくれれば良いの。判るでしょ」

 洋子も洋子で大分適当な感じに。何だか『暇つぶしにやってました』とでも言いそうな。そんな感じが漂い始めた。


「いや判んないですよ」「えっ、じゃぁもう『パカン』は無しで?」

「何ぃ、経験したかった? じゃぁ行くよっ!」「止めて下さい!」

「ストップストップッ!」「合格有難うございますっ!」「なんだぁ」

 床を踏み鳴らそうとした足をそっと降ろして事なきを得る。

 ホッとした所で洋子が笑いながら話す。


「あんた達ぃ、下に行かなくて良かったねぇ」「……」「行ったらもう、大変なんだからぁ」「ずっと掘ってるから?」「そう。一日中掘ってるんだからねぇ」「うわぁ」「寝る間もなく?」「当たり前じゃない」「当たり前なのか!」「ひでぇ」「もう、二十四時間体制で掘りっ放しよぉ」「にぃじゅうよぉじぃかぁあぁん?」「マジ寝る暇ないじゃないですかぁ」「そうよ。三交代制らしいけど、これがまた結構辛いって話よぉ?」「!」「三交代ぃ?」「そう。休みなく」「それって寝れる、のでは?」「一日中『ガガガガ』ってやってる横で寝られればの話だけどぉ」「あぁ」「騒音でぇ」「騒音なんて良いのよ別に。キツイのは、こう『震え』が来るってこと」「ヤヴァイ薬使ってんですか?」「いや覚せい剤じゃ眠れないのでは?」「違うわよ。削岩機の振動で手がこう、震えるらしわよ?」

 新人達は洋子が話す『地下生活』の方が、幸せなと思えて来た。現実とは違っていても。命を張って警備をするより、多少煩かろうが、八時間勤務で穴だけ掘っていた方がマシ。少なくとも、作業中『ヨシッ!』って言っておけば、命の危険は無さそうだし。


「兎に角、諸君は合格したってことで。おめでとう」『ペコリ』

 すると扉が自動的に開いて通路が見えて来た。洋子が指さす。

「これからコントロールセンターに行って貰います。そこで配属先が決まるので、以降は隊長の指示に従ってねぇ。じゃぁ!」「すいません、配属先って、どうやって決めるんですか?」「んんっ?」

 サッサと行こうとしていた洋子が立ち止まり、振り返った。首を傾げた瞬間、新人達に『嫌な予感』が走る。


「先着順だけど?」「は?」「配属先によって仕事違うんですか?」「まぁ、基本同じだけど、担当する場所が違うって感じかなぁ?」

 それだけ言って歩き始めた洋子だが、新人達にしてみれば『もっと説明してくれよ』と言いたい。直ぐに声を掛ける。


「配属先って『希望』とか聞いてくれないんですか?」「第三志望まで紙に書く、みたいな?」「そうですそうです」「ナイナァイ」

 洋子にしてみれば『馬鹿げた発想』に思えたのだろう。腹を抱えて笑い出した。新人達は洋子が声を出して笑うのを始めて目にする。

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