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海底パイプライン(二百七十二)

 結局当てられたのは吉沢だ。田辺のように『スルーしてくれれば良かったのに』と思っている。当然顔に出ていた。洋子は笑う。

「判るよねぇ?」「はい。勿論です」「良しっ!」『ゴフッ』

 グッと肩を組んで来て、胸を『パンッ』と叩かれる。

「じゃぁ答えてぇ。間違えたら判ってるねぇ?」「はい」

 もしかして唾が掛かったかもしれないのに、洋子は平気なのか。それとも吉沢の『時間稼ぎ』を許さないだけか。笑いながら離れる。

「第一問から間違えちゃダメよぉ?」「はい頑張ります」「よぉし」

 と思ったら近付いて来て、ナイフを喉元に突き立てる。

 当然『鞘の中に引っ込む』と言いたい所だが、地肌に切先を突き付けたら『チクリ』とするものだ。吉沢は驚いて目を見開く。こんなの答えている場合ではない。生唾さえも飲み込めない状況なのに。


「じゃぁ答えてぇ?」「えっ」「ほら早くぅ」『おい。話が違う』

 新人達に動揺が走る。安堵の空気が一転していたのだ。

 理由は明らか。洋子が左手を右耳に添えて、吉沢の口の前に固定したから。他の誰にも聞こえなかった吉沢の第一声を聞いて、笑いながら急かしている。すると、喉から離したナイフの柄で、吉沢の腹を小突き出した。これ、答え終わるまでずっとやっているだろう。

 つまり『一人づつ答えを聞いて行く形式』にしやがった。これではクイズとは名ばかりの『試験』ではないか。実に紛らわしい。


『カンニングなし?』『無理じゃね?』『どうする?』『知るか!』

 様々な思惑だけが行き交う。せめて吉沢が、洋子に何と言われようが『デカい声』で答えれば良いだけなのだが。肝心なときに金王が一時消失した状態なのか? どうにも望み薄に思える。


「ボソボソボソボソ」「良いのぉ? それでぇ?」「えっ、違うんですか?」「声がデカい♪」「イテッ。すいません」「で、どうすんの? 人生掛かった答えが『それ』で良いのぉ?」「えぇ」「変えるなら今の内よ?」「大丈夫です」「そぉう。本当に良いのねぇえぇ?」『何故色っぽい?』「……はいっ」「よぉっしっ!」

 単に『お決まりのやり取り』をしたかっただけなのか? 満足そうにコツコツと離れて行く。多分『一緒に落ちる訳には行かない』ので、安全圏に行くのと同時に、『吉沢の足元が開くスイッチ』へと移動するのだろう。しかし『穴』は、一体幾つあるのか。

 新人達は何度も『穴』を見ているはずなのだが、それが何処なのかは覚えてはいない。覚えていれば、絶対に立たないであろうから。

 問題を出題したのとは『異なる場所』に、洋子が立ち止まった。


『タンッ』「うわっ!」「せいかぁーい。答えは『ガリソン施設の警護』でしたぁ。これは流石に判るか。て、何ビビってんのぉ?」

 脅かしやがって。吉沢は両手を思いっきり広げていたのを止めて、しれっと『休め』の姿勢に戻った。

「いや、今『落ちる』かと思って」「吉沢ぁ。自信を持てぇ?」

 そんなこと言ったって。テメェが脅したからだろ。ぶっこr。

 とりあえず、今洋子を見ると、何か『暴言』を吐きそうになるので見れない。ここは人生で一番の我慢だ。正解で良かった良かった。


「こんな簡単な問題で『一人づつ答えさせる』なんてしないからぁ」

 笑いながら大声で言いやがって。おまけに『ホッ』としている奴を指さしながら歩き回る。当然、一番前にいた田中と水谷は漏れなく指された所だ。表情だけは『俺、知ってたし』で乗り切るのみ。


「じゃぁ、第二問ねぇ!」「………」『……早く出せぇ。クソがっ』

「皆ぁ、三ツ星シェフのお店に行ったことあるかなぁ?」『無ぇよ』

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