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海底パイプライン(二百七十)

 急に何だ。多数決でも採ろうと言うのか? 新人達は顔を見合わせる。『渦中の奴』を除いて。必死に『どうなるの?』と聞こうとしているが、誰も目を合わせてくれない。おいおい。頼むよ。

 結局、目を合わせてくれたのは洋子だけだ。洋子は笑う。


「正解はぁ? 『セーフ』だぁあぁっ!」「おぉおぉ」

 するとホッとしたのだろう。やおら立ち上がる。何だか『ヒーロー気取り』のようだが、洋子も今は責めない。軽く拍手だ。

『パチパチパチ』『パチパチパチ』『パチパチパチ』「ども……」

 つられるように拍手が鳴り響く。頭を掻きながら礼を言っているが、早々に『枠外』へと出ていた。

『やっぱり嘘ぉぉっ! サヨナラァッ!』『うわぁあぁあぁ』

 なぁんてなる前に次善の策を打つのは当然の行為。油断出来ない。

「おりゃぁあぁ!」『ドンッ』『パカーン』「うわっ!」

 如何にもふざけた感じの声。それと同時に、これまた大きな音がして穴が開く。『もっと遠くへ』と行こうとした先。その思考を読み取ってか、行く手を阻むように穴が開いたのだから堪らない。

 すんでのところで踏みとどまると、思わず洋子の方を向いた。当然のことながら笑ってやがる。言いたいのは『落ちなかった』ではなく『逃がさない』であろう。こちらを向いたことで穴が閉じる。


「びびってやんのぉ」「……」「まぁ良い。全員休めっ!」

 悔しいが、洋子に言われた奴を含め、何も言い返せない。

 しかし『意外な命令』に戸惑いながらも、有難く休ませて貰おうと思う。緊張していたし、『基準』とやらを説明して貰えるなら、『生き延びるチャンス』が増えそうに思えたからだ。

 両手を後ろにして、足を広げて立つ。ナイフは握ったままで。


「穴に落とす基準だがぁ、それは『休め』って言ったでしょっ!」

 突然のことに、思わず『ビクン』となっていた。洋子の声に。

 実は『休んだ直後』から、洋子と相対した奴からは見えていたのだ。再び洋子の背後から近付いてくる奴を。

 確かに洋子は言った。隙を突けと。恥も外聞も無く。プライヤーが欲しければ、殺してでも奪って来いと。あれ? プライマー?


『パカンッ』「うわぁあぁあ『パタン』「このクズがっ、落ちろ!」

 思い出す間もなく落とされて、落下音の余韻に浸る間もなく蓋が閉じられた。追加で浴びせられた『暴言』は、一体誰向けなのか。


「とまぁ、こんな感じの基準になっているのぉ。判ったかなぁ?」

 解る訳が無い。洋子が率先して挙手しているが、誰もつられない。

 歩きながら探している。陰になっている中に『挙手している奴』が居るかを。居ないのを確認すると、今度は逆向きに歩き出す。

 目を合わせて『判んないの?』と聞きたいのだろう。

 しかし、誰も彼もが『すいません』と下を向き、目を合わせようとはしない。合わせるものか。どうせ碌なことにはなるまい。


「そっかぁ。判んないかぁ」「……」「……」「……」

 遂に諦めたか。この人間の皮を被った悪魔め。人を人とも思わぬ。

「んんん? 誰か居ないかなぁ? どう? 田中」「判りません」

 覗き込んで来やがった。髪を揺らし、胸の谷間を魅せながら。クッ。

「そぉっかぁ。残念だなぁ。水谷はどう?」「すいません。全然」

「あれあれぇ? どういうことかなぁ? んー。どうしよっかなぁ」

 素直に教えれば良いんだ。基準を。これじゃ『休憩』にならん。

「判ったっ! じゃぁ『クイズ』にしよっか。うん。そうしよう。ねぇ? 皆もその方が、楽しくってイイよねっ★ミ 名案♪」

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