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海底パイプライン(二百六十八)

 洋子が構える。これで果たして何度目かなど、数えてもいない。

 殺し屋が『本気になる』のは毎度のことで、五十嵐家では『最初からトップギアで行け』と教育されている。余裕ぶった行動など要らぬと。これは『戦場での経験』からだろうか。恐ろしい考えだ。

 殺し合いの最中に『肩慣らし』など相手に失礼。曲り形にも『殺人のいろは』を学んだ相手に油断も情けも不要。邪魔でしかない。

 言葉は交わさずとも殺し屋同士。殺し合えば、きっと心は通じ合う。そう信じて来た。ほら『信じるのは自由』って言うし。

 故に『さっさと殺してあげること』が相手のため。自分のため。

 もし仮にだが『本気を出す前の相手』をれたら、それは『ラッキー』と喜んで良い。周りにだって誇るべき。格上なら尚更。

 それに、人を殺めるのを『楽しむ』だなんて、そんな趣味の悪い奴はさっさと始末してしまった方が、世のため人のためだ。


「ヘイカマーンッ!」『クイッ。クイッ』「……」「……」「……」

 洋子の手招きを見ても新人達は躊躇せざるを得ない。が、新人達に『聞きたいこと』は残っていない。行くしかなかった。逝くしか。


「うわぁあぁあぁっ!」「デカい声を出すなぁッ!」『バキッ』

 一番最初、ではないが、真っ先に飛び込んだ『勇気ある行動』を洋子は褒めたりはしなかった。突き出されたナイフ避けると、ナイフの柄、一番端の鵐目ししどめで肩を強打。鉄製だけに痛い。

 かと言って、叫び声が響くことも無く。あっという間に姿が見えなくなって、蓋も閉じられたからだ。きっと『次の方どうぞ』と、洋子なりの配慮なのだろう。なんて奥ゆかしい心遣い。感服する。


「フンッ」『ダッ!』「ピョンピョン跳ねるなぁっ!」『バキッ』

 二人目。奴は何を思ったのか、支給されたナイフを使わずに『ドロップキック』をお見舞いしていた。ドロップキックとは、地面に落ちて跳ね返ってきたボールを蹴ることを言う。主にラグビーにて使われている用語だ。であるならば、今の洋子の発言は如何に。

 実は今のは『飛び蹴り』の方であった。プロレス技だ。

 しかしだからと言って、洋子の指摘通り『二度も飛んだ』訳では無い。飛んだのは勢いを付けて一度のみ。両足で。

 これは既に『推察』するしかないのだが、洋子の繰り出すナイフを恐れてのことであろう。足からなら『致命傷にはならない』と踏んでのこと。しかし思いっきり踏まれ、闇の世界へと消え去った。


『ダダダダッ』『ダダダダッ』『ダダダダッ』

 目の前で『悪い例』を見せられて、幾らかでも学習したのだろう。

 示し合わせた三人が、それぞれ別の三方向から同時に攻め掛かった。成程。洋子の手は二本。三本のナイフを繰り出せば、誰か一人は刺さると言う訳ですね。判りますその気持ち。凄く良く判ります。


「足音っ!」『バキッ』「タイミング!」『バキッ』「ほら角度!」

 しかし洋子に『三人掛かり』は、十分対処可能な人数であった。

 何せ洋子には両手と片足がある。瞬間的になら、両足だって使いこなせるのだ。素人に毛が生えて来た程度の○ン○ンに、本気の洋子が負けるはずがない。(問題。○には何が入るか。正解は後述)

 実際洋子は、正面のナイフは右足を蹴り上げて対処。効果音と共にナイフは空高く舞い上がった。空は見えないけど。

 左からのは振り下ろした右手で払い落とす。そして後ろからのナイフについては、相手の目を見て対応していた。

 当然だが、教官として『ナイフの角度』も凝視していた。左手で相手の手首を掴むと、正面から来た奴にそのまま押し付ける。

「ウッ!」「角度はこうっ!」「うわぁあぁ、俺は悪くないっ!」

答え:(シ)ン(ジ)ン

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