表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1452/1526

海底パイプライン(二百六十四)

 顔は兎も角、目つきは悪い奴だ。野太くなった声も含め。

 さっきまで可愛く喋っていたのは仮初めの姿か。若しくは演技か。いずれにしても『危ない奴』であることは確かだ。

 既にどっちが『表』なのか『裏』なのか判らないが、今の洋子と街ですれ違っても、声は絶対に掛けない自信がある。

 例え『職務質問』であっても、無事には済まなさそう。


「じゃぁ、次は『ナイフ』を配る。集まれっ!」

 右手を大きく振りながら歩き始めた。既に『自前のナイフ』を手にしていた者は合図を見て躊躇する。どうせ碌なモンじゃない。

 命が掛かっているのに、変な道具はサングラスだけで十分だ。


「早くしろっ!」「!」「ハイッ!」「ハイッ!」『ダダダッ』

 今度は両手で合図されてしまい、新人達は駆け足で集まって来る。

 サングラスとは別の場所をキックしていたのだろう。同じく床がせり上がって来てテーブルと相成った。洋子が蓋を開ける。


「これは訓練用だ。加えてどれも一緒。好きなのを選べっ」

 一応は箱に入っていて、説明書きもある。微妙な色合いの違いを見つけると差異を探す。すると確かに差異はあった。しかしだからと言って、『性能に差がある』とは判らない。

 手にしたナイフを隣同士で見比べてみるが、違いが『年月日の違い』だけに思える。その日付も、何を表しているのかすら不明。


「どれでも一緒っ!」「ハイッ」「体で試して欲しい奴!」「……」

 パッケージに記載されている言語。実は『スワヒリ語』なのだが、誰も何語か判らない。それでも読めちゃうのが不思議な位で、理由はスペルが『ローマ字似』だから。当然、読めたとて意味は解らん。

 誰だぁ? 説明書きにスワヒリ語をチョイスしたのは。読めるのは写真の横に添えられた『訓練用ナイフ』の日本語だけ。

 いやいや、それは書いてなくても見りゃ判るって。ふざけ過ぎ。


「うへっぇ。これも『NJS製』かよぉ」「マジィ?」「うわっ!」

 開封したナイフに『刻印』を見つけた新人が、思わず吐露。

 するとサングラスで懲りたのだろう。思わず手を離したり、ハンカチに包んで手に持ったりと、腫れ物に触るようだ。


「その通り。訓練に必要な『仕掛け』があるのでぇ、体で覚えろぉ」

 ニッコリ笑って言い放つ。ホント洋子は『意地悪な奴』である。

 説明は望めないようだ。それよりも、洋子自身が『早く使いたい』と思っているきらいも。仕方ない。ここは翻訳ソフトの出番だろう。

 が、残念なことに、マグロ漁船に乗船したときから『スマホォ? あぁ昔はそんな物もあったなぁ』と、想い出に浸るのみ。無理だ。


『シュシュッ』「教官! これ、どの辺が訓練用なんですかぁ?」

 ナイフを逆手に持ち、左右に振り回しながら聞いて来た。

 左右のステップも軽やかで、実に良い動き。随分と手慣れた感じがするではないか。と、突然キック。からの横一文字にカット。

 今の勢いなら、きっと『一刀両断』だろう。今まで散々振り回して来たに違いない。そこで『ベロリ』と刃を舐めれば、洋子並みに『危ない奴』の仲間入りだ。一応は遠慮してやらないみたいだが。

 感化されたのか『腕に覚えのある奴ら』が振り回し始める。すると一様に思ったようだ。『確かに奴の言う通りだ』と。

 何処が『訓練用』なのか判らない。極々普通のナイフではないか。


「あぁ、使い方が全然なってなぁい。次は全員相手してやるからぁ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ