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海底パイプライン(二百五十九)

 凄く微妙な数字だ。表示された数値が『能力値』であったとして、新人よりは多いが倍には満たない。もしかしてこれは、勝てるのでは? ほら、二人掛かりなら洋子の数値を超える。

 大勢の者が、瞬時に同じことを考えていたのだろう。今更だが『組み直し』を申し出ようとして足が止まる。

 そうだ。洋子は五人の新人を、瞬時に葬り去ったではないか。

 だとしたらこの『数値』は何か。レベル? なら勝てそうにない。


「何処見てんのよっ!」『バシッ!』「あぁあぁっ!」

 一瞬のことだった。山根がビンタされて転がって行く。

 洋子が胸を押さえているのを見た新人達は、自分のサングラスに『九百二十』から『九百三十』の間で揺れ動く数値を確認出来た。

 勿論次に見つめるのは『ウエスト』であり『ヒップ』であろう。


「あっ、八百五十に下がった」「こぉのぉ、ド変態野郎がっ!」

 山根を蹴り飛ばした洋子の陰で、『正解』と頷く者多数。

 何の意味があるかは知らないがこのサングラス、『メジャー機能』が付いているらしい。振り上げられた洋子の太ももで、レスポンスタイムを確認する強者も。ふくらはぎ、足首、そして足のサイズ。

 奴はキッチリ『マニュアルを読み込んだ』派であろう。左側にある『モードスイッチ』を切り替えて、文字の大きさやフォントを変更したり、表示位置の微調整まで巧みに操作している。


「教官っ! 俺の『数値』が出ませんっ!」「はぁ?」

 洋子が不機嫌そうに振り返った。その顔は『今良い所だったのに』である。山根は若干残念そうにしているが、危うく死ぬ所だったのを、もうちょっと自覚した方が良いだろう。この隙に立ち上がる。


「俺の壊れてるみたいなんで、交換しても良いですか?」

 左手でサングラスを外し、右手の親指で中央のテーブルを指す。

 さっきまで『共に生き抜こう』と、誓い合った仲間が五人も居なくなっているのに、残されたサングラスを『予備扱い』とは。


「ダメェ」「えっ?」「さっさとサングラスを装着しなさい」

 勝手に『交換が許可される』と思っていた新人が足を止める。

 振り返れば洋子が『マジ顔』で命令しているではないか。納得が行くとか行かないの問題ではなく、直ぐに装着せざるを得ない。


「何でですか?」「新人はサングラスを外さないこと。これ規則!」

 まだ食って掛かろうとした所にズバリ一言。思わず押し黙る。

 規則に従っていようがいまいが『死の危険』があるのに、規則に従わなければ死は確実にやって来る。ほら、洋子の手元を見て。


「ちゃんと説明書き読んでれば判るよね? 書いてあったでしょ?」

 あっ、その『含み笑い』は『コイツ等読む訳無ぇ』って思ってたでしょう。でも正解。二十人中、ちゃんと読んでいたのは五人のみ。

 特に『ズッシリ』と、妙な重みを感じたのを掴んだ奴は直ぐに手放した。『サングラスでこの重みは有り得ない』と思えばこそ。


「きょうかぁん。俺のグラサン、全く見えないんですけどぉ……」

 右手を上げ、左手でサングラスを指している男。確かに『見えていない』のだろう。明後日の方を向いていて洋子と目が合ってない。

 すると相棒が体の向きを変えてやって、洋子の方に顔を向けた。


『シュッ! カーンッ!』「イテッ!」「良かったな。当たりだ!」

 洋子の投げたナイフがレンズに命中すると、金属音が響き渡る。

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