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海底パイプライン(二百五十八)

「だっ、大丈夫です。俺、女より男の方に興味あるんで」「そう」

 おどおどしながら行ってしまった。生理的に受け付けなかったらしい。洋子は早々に諦めて他を探す。めげない精神の持ち主だ。


「じゃぁ吉田ぁ。余ったのぉ?」「俺、心に決めた人が居るので」

 また振られてしまった。『誰だよ』という突っ込みは無しで。加えて『ココに居るの?』の更問も無かった。

 洋子に『イタリア人の血』が流れているのかは、分かりかねる。


「へぇえぇ。良いなぁ。山根ぇ!」「木下っ! 組もうぜっ!」

 言い振りからして洋子に彼氏は居ないのか。きっと山根も初対面では、洋子に好意的な印象を抱いてはいただろう。

 しかしあれからまだ一時間も経過していないのに、随分と避けられてしまったものだ。洋子は両手を腰に当てて頬を膨らます。

 ほら。怒った顔だって、抜群に可愛いではないか。


「二人組になれなかった奴、全員私と組むっ! ハイ三秒前っ!」

 大きな声で宣言の後、両手を叩いて合図を送った。すると新人達の『ペア探し』が驚く程加速する。何だお前ら仲良いんじゃないか。

「おい組もうぜっ!」「君島っ!」「お前で良いっ」「ニィッ!」

 何だかんだ言って、洋子は新人をちゃんと『名前』で呼んでいると言うのに。酷い新人も紛れている。

 実際、殆どが初対面同士なのであるが、この『記憶力の差』が後にどう響くのかは不明だ。もしかしてこれは、瞬時に相手の実力を見抜く訓練なのかも知れない。


「退けっ! 木下は俺と組むんだっ」「グハッ!」「イチゼロ!」

 新人達は『洋子のカウントダウン』を信じては居なかった。

 僅かながら進歩と言えるだろう。丁度足元に山根が転がって来て、洋子は足で止めた。『ヒィィッ』な顔で固まった山根の襟首を洋子はムンズと掴み、軽々と引っ張り上げる。山根はカチコチだ。

 それでもズレたサングラスを山根は急いで直す。どうもこうも無い。格好を付けるまでの余裕は全く無く、ついでに生気も無い。


「何だ山根ぇ。私と組みたかったのかぁ」「はっはいぃぃぃぃ」

 完全どもっている。サングラスを掛けていても『目が虚ろ』であろうことが丸判りだ。これが『新人はサングラス必須』の理由か。


「大丈夫。優しくしてやるからなぁ」「よよよろしくお願いします」

 肩をポンと叩いて『ペア成立』と相成った。終わりだ。完全に。

 さらば山根。君のことは明日には忘れている。と、全員が思っている。お陰で『洋子と組む』という危機は、めでたく脱したのだ。


「じゃぁ、全員サングラスを装着してぇ」『スチャッ』『スチャッ』

 辺りを見回した洋子の指示に全員が従った。このタイミングで初めてサングラスを身に付けた者も多い。すると騒めき出す。


「左上に『数字』が見えているかなぁ? 自分の相手を見てぇ」

 ざわざわしているのは、既に『数字が見えている』のだろう。

「お前五百二十だわ。俺は?」「六百三だって。何、俺負けたぁ?」

 互いに数値を交換し合って『機能テスト』を実施か。もしかして『このためだけ』にペアになったとか? なら、命は助かる?


「ほら山根ぇ。私は幾つだぁ?」「えっ、見て良いんですか?」

 洋子に催促されて緊張したのか、山根はサングラスを掛け直した。

「当たり前でしょ? ほらぁ良く見なさぁい」「……九百二十五」

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