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海底パイプライン(二百五十四)

 確かに男は『女子トイレ』に用は無いだろう。

 だからと言って、数少ない女子が万が一にでも飛び込んで、『この状況』を見たらどう思うだろうか。想像して欲しい。

 女子がいきなりしゃがんだので、八割の男は『催した』と思う。


『ここでするのぉ? でもまぁ、しょうがないか。よいしょっと』

 効果音として『プリーン』までは興味を惹くかもしれないが、その後のことについては、効果音も含め、一旦触れないでおこう。


「ねぇちょっと、コレじゃないかなぁ?」『コンコン』

 が、しかし、そうではなかった。レンガで出来た壁の『下から二番目』が、五ミリ程出っ張っているのに気が付き、軽く叩いている。

 教室の一番前に座っていた眼鏡女が。名は確か御堂。

「おいおい。『トラップ』じゃねぇのかぁ?」「下手に触んなっ!」

 男達は臆病風に吹かれているのか。叩き続ける御堂に身振り手振りで意見具申。すると御堂は叩くのを止めはしたが、今度は『ジッ』とレンガを見つめている。振り返りもせずに。何だか感じ悪い。


「だったら他も探してよぉ。うち、さっきは二番目に居たんで、追い付けなかったんだからさぁ。これ、絶対『スイッチ』だって」

 姿勢を更に低くして、レンガに目を近付けた。見て判るものか?

 判らないからなのか、それとも邪魔をする奴に対してか。声の感じからして、『相当イラついている』であろうことだけは判る。

 それに、今は『黒髪』だが、きっと元『ヤンキー』の類であろう。たくし上げて見えた耳には『ピアスの跡』が幾つも。

 確かマグロ漁船に乗り込む前、『安全のため』と銘打って、金属は全部外すよう指示があった。当然、入れ歯を除いて。

 髪はマグロ漁船に乗っていれば、自然と『地毛』に戻る。


「明らかに『スイッチの形』をした物を、探した方が良いって」

「後ろに居た奴、誰か『ドアを開けている所』って、見てねぇの?」

 前の方に居た男二人が、後ろの方に居た奴らに責任転嫁。しかし、『さっき始末された奴ら』を除き、新人達に『仲間意識』は皆無。

「音って、『下の方』からだったかぁ?」「判る訳ねぇだろっ!」

 信じられるのは自分に非ず。『信じるに値しそうな意見』俗に言う『耳障りの良い意見』を信じるのであって、自分には自信が無い。

 かと言って、『信じるに値する』と思った場合でも、発言者を信じる程人間が出来てもいない。端的に言えば『人間不信』であろう。

「埒があかねぇ」「思い切って、もっと強く押すしかねぇかなぁ」「ヤメロって」「あぁあぁ?」「あぶねぇかもしんねぇだろ?」

 狭い『女子トイレ』と言う名の通路に二十人も押し掛ければ、壁を調べようにも『ハイハイ。ちょっとごめんなさいねぇ』と相成る。

 しかし奴らに、『譲り合いの心』なんて高尚なものは存在しない。

 一生の内に、どれ程の回数『ごめんなさい』と言って来たのか。メンチを切り始めたのを見れば明らか。絶対に『三回未満』だ。


「やんのかぁ? コラァ」「何だテメェ? 上等だコラァ」

 不穏な空気に。御堂が立ち上がり男を睨み付ける。一触即発だ。

 しかし『止める奴』は皆無。さっきまで『圧を掛けていた上官』は何処へだし、どうせ『後で殺し合う』と思っているが故に。

 だったら別に、何処でおっぱじろうと『好きにしろ』と思うだけ。


「うちが『ココ』って、見つけてやったのに。あぁ? 偉そうに!」

 言うが早いか『タンッ』と右足でレンガを蹴り飛ばす。すると突然、目の前の壁が勢い良く開いたではないか。驚いたのは御堂だ。

 鈍い音と同時に、反対側の壁まで弾け飛ぶ。眼鏡もろとも。

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