表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1436/1530

海底パイプライン(二百四十八)

「じゃぁ、説明しながら行きましょうか。こちらの廊下ですけどぉ」

 歩き始めるのと同時に『廊下の説明』が始まった。

 それにしても、また『早歩き』かと思える初速からの、『完全に小走りですけど』な速さへ。しかし洋子の表情は相変わらず穏やかで、説明の口調は逆に『ゆっくり』で聞き取り易い。


「一定間隔で『コンセント』がありますよねぇ。ほらまた有った」

 廊下は正方形の『Pタイル』が敷き詰められていて、目立たない程度の市松模様となっている。そこに一定間隔で柱があって、廊下の方に三十センチ程はみ出していた。痩せている人であれば、丁度隠れることが出来るだろうか。コンセントはその足元に。

 新人達は洋子が指さした柱の根元を、通り過ぎる度に振り返る。別に何てことはない。極々普通のコンセントだ。きっと『廊下の掃除』をするときにでも使うのだろう。因みにだが、廊下は『血が滲み込まないように』か、非常に掃除がし易そうである。良かったね。

 いや、そうじゃなくて。相変わらずだが、洋子の足元から聞こえてもおかしくはない『コツコツ』が聞こえない。聞こえるのは新人達の『ドタドタ』という足音ばかりだ。

 きっと洋子にしてみればそれも『情報』で、どんな体格の者が何人、どれくらいの速さで接近して来ているのかが、判るに違いない。

 しかし、そう思ったのも先頭を走る奴だけで、洋子がまさか『静かに走れやボケェ』と思っていることにまでは至らず仕舞いだ。


「このコンセントを使ったら、命は有りませんからねぇ」

 にこやかに説明しながら、早くも次のコンセントを通り過ぎた。

 慌てたのは新人だ。『何だ。今度使わせて貰おう』と思っていたのも束の間。使ったら突然『人生終了ゲームオーバー』になってしまうと来たもんだ。それって、一体どういう仕掛けなのかと。

 感電でもしてしまうのだろうか。それとも本土と違って、電圧が妙に高くなっている? 例えば百万ボルトとか。


「教官、質問よろしいでしょうか?」「はい。何でしょう?」

 歩きながら、いや、走りながらの問いに洋子は笑顔で許可を出す。

「このコンセントは『電圧が高い』とかですか?」「えぇえぇっ?」

 洋子の驚きよう。目を一瞬丸くして、首を傾げるとか。

 新人もまだ『短い付き合い』だが、そんな『戸惑う洋子』なんて、見た覚えがない。別に『直流ですか』とか、苦手そうなことを聞いた訳でも無いのに。


「高い電圧ぅ? コンセントを見ただけで『危険』って判るのぉ?」

 しかしそれも『失礼な意見』で、こう見えて洋子だって戸惑うこともあるし、乙女の恥じらいだって、ちゃんと保有している。

 勿論『何か』とセットだったりするので、残念ながら『証人』を用意することが出来ない。質問者がこの先生きのこっていれば、『初めての経験』が約束されるかもしれない。


「いえあのぉ、使ったら『ビリビリッ』って来るとか、かなぁと」

 フレンドリーに話したつもりだが、洋子の表情が笑顔に変わった。

 どうやらコンセントは特別製ではなく、ちゃんと『JIS規格』の物だったらしい。当然だ。コンセントに特別な仕掛けは何も無い。


「いいえ。『そういう規則』になっているだけです」「規則……」

「言わば『馬鹿発見機』の役割を果たしているぅ?」「うおっ……」

 洋子が指さしたのは、コンセントとは正反対の天井側である。

 今度は新人が一斉に上を見る。すると八割方の新人が、一瞬光ったセンサーに気が付いただろう。監視カメラだ。一人ピースサイン。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ