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海底パイプライン(二百四十三)

 格好を付けるために前髪で目を隠すのは自由。そう聞いている。

 ただ、顔の輪郭と目の色で本人確認をする以上、『見せて貰わねばならぬ場合もある』とも。まぁ、入国審査と同じか。

 違うのは、逆らえば『確実なる死』が待っているんだとか。

 それとあと一つ。『何人か生贄にされる』とも事前に聞いていた。

 明確な基準こそ示されてはいないが、少なくとも役立たずと認定された者が、見せしめにされるであろうことは容易に想像が付く。

 何せ配属されるのが、コントロールセンターを含む『中央特区』であり、その警備部門であるのだから。外敵の侵入を水際で防ぎ、ときには『速やかなる排除』も辞さない。そんな職場である。


「前髪降ろしても俺、カッコイイっしょ?」「そうですね」

 五十嵐が肯定して見せても、尚不満気味である。声だけで振り向きもしないからだ。写真との一致を確認しチェックを付けただけ。

 すると突然、前髪を降ろしたばかりの男に軽く蹴り。机上から。

「コイツと俺だったら、ぜってぇ俺っしょぉ?」「そうですね」

 再び笑顔で肯定するも、不満は爆発寸前か。しかし五十嵐はおろか、蹴られた男すらも煩型を全く相手にしていない。

 実は『蹴られた』と言っても、事前に察知していたかのよう。受け身の如く、腕で軽くあしらっていたのだ。実害は皆無であろう。

 寧ろ蹴られて嬉しそうに、チラっと見上げたではないか。前髪の隙間から明らかにさげずんだ目が見える。


「何だ? オメェ」「谷崎です」「そうですね」「面白れぇ」

 煩型にしてみれば名前なんてどうでも良い。生意気な反応をするようなら絞める一択。しかし今は、可愛い『五十嵐ちゃん』の手前、生かしておいてやろう。それにしても五十嵐は面白いではないか。

 今確認したばかりなのに、『谷崎』には興味もないのか。改めて名前を確認して頷いているのみ。指さし確認を足でやったのを咎めないとは、『たいしたことではない』と認めた証だ。


『良かったぁ。死ぬの俺じゃねぇわぁ』『こいつが生贄第一号かぁ』

 ニヤニヤするのを堪えていたのは、谷崎だけではなかったらしい。

 どうやら教室に集った新人達は、煩型のことを『真の勇者だ』と認識し始めていた。最初は『釣り目的』だと思っていたからだ。

 わざと喧嘩腰な態度で『トラブルを誘発する係』であると。この会社なら、それ位はやって来てもおかしくはない。

 しかも教官の名前を聞いても、まだ馬鹿な態度を改めないとは。折角相手が優しく『五十嵐だ』と名乗ってくれたのに。


「やっぱ五十嵐ちゃん、可愛いし、面白れぇやぁ」

 五十嵐と言えば、警備部門の中枢を固める『暗殺一家』だと、聞いていなかったのだろうか。この様子じゃ、聞いて無いんだろうな。


「最後にゆっくり『お話し』しましょうねぇ?」「やったぁ!」

「席に戻って。お・ね・が・い」「はぁいっ!」「えー俺達はぁ?」

 煩型の声に五十嵐は笑顔で答えるのみ。しかし奴らは、その『笑顔』で満足したようだ。他の奴らなんかどうでも良い。

 何せ可愛い教官『五十嵐何とかちゃん』が、一番最後に『お話し』してくれると言うのだから。まだ下の名前も聞いていなかったが、そこで聞けば良い。その後は何の話か?

 先ずは『マグロ漁船での武勇伝』から初めてみるか。


「はい。じゃぁ、次はコントロールセンターへ案内しますのでぇ、名前を確認済の皆さんは廊下に出て待機でぇ。えーっと廊下では静粛に。海の方をご覧になってお待ちくださぁい。直ぐに参りますぅ」

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