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海底パイプライン(二百三十)

 四平が案内したのは『金ピカのエレベータ』だ。趣味が悪い。

 話しながら歩いて来たのだが、いつの間にか『バックヤード』を抜けていたらしい。石井中佐は辺りを見回した。

 打って変わって、荷物の一つもない豪華な造りであると判る。少なくとも『この階』に、人質が拘束されている訳は無かろう。


「急に豪華だな」「そうですねぇ」「しかし趣味が悪い」「えぇ」

 振り返れば四平が居ない。何だ。後は『勝手に行け』か?

 と思って反対側を見れば、何やらドアを閉じている所だ。エレベータの到着を待つ間に『見てはいけない扉』を閉めているのだろう。

 どうやらバックヤードを抜けたのは『たった今』だった模様。


「このフロアは『理事用』なので」「ほう。だそうだ」「はい」

 四平が戻って来て説明している。それ以上の説明が無いので『何つぅ名前』の『どんな組合』なのか、石井中佐にはサッパリ判らないし著者自身も調べないと思い出せない。兎に角『偉い人用』だ。

 石井中佐がそれ以上突っ込まないのは、彼の性格を鑑みた著者自身の確かな考察と、類まれなるゲフンゴフン、であろう。

 今日は花火大会が綺麗だったので、それで良しと言うことにする。


「来ましたね。どうぞ」「うむ。行くぞ」「はっ」

 やって来たエレベータは、これまた豪華を通り越して『成金主義』と言わざるを得ない領域にある。床は大理石で天井は金ピカ。どうせどちらも『風な装飾』であろう。閉まった扉は全面鏡張りである。


「何階まで行くのかね?」「えっとぉ『一番下』です」「そうか」

 男同士『鏡越しに目を合わせる』のも何なので、他の面を見れば、そこは三面共『ガラス張り』なのであった。手摺は金ピカだ。

 観光ホテルやデバートに良く見るタイプか。が、しかしだ。不思議なことに、見えるのは三面とも『コンクリートの壁』なのである。

 実に地味で、何ともきちゃない。とても『観光地』には見えないが、こんなんで『ガラス張り』にした意味があるのか、甚だ疑問だ。


「何をやってる?」「少々お待ちください」

 ガラスの向こうの景色が『何も変わらない』ので、エレベータが動いていないのが丸判り。部下なら蹴っ飛ばしている所だ。

「あれ? 開かないなぁ。どれだぁ? っかしいなぁコレだよなぁ」

 最近は『ハーフボックス』が普及したせいで、そもそも元祖である『エレベータに乗ったことがない』という若者が増えたのだろう。

 コイツは『行先の階』を押さなければ動き出さない代物なのだが、四平がそんなことも出来ず、グズグズグダグダしているのは明らか。

 石井中佐は、無線係に『代わりに押してやれ』と指示をする。

 それは当然、四平の首を絞めて床に転がし、何階だか知らないが『一番下にあるボタン』をポチッと押すだけの、簡単なお仕事だ。


「お待たせしました。いや、関係者しか行かれないフロアでして」

 顔を上げた四平が首を竦めた。既所でエレベータが動き出す。

 無線係が無表情のまま後ろに下がったので、四平が『何をしていたのか』が露わになる。どうやら操作盤の下にある扉を開けて、『関係者専用のボタン』を押していたようだ。

 閉めた扉から鍵を抜くことも難儀しているので、きっと開けるときも苦労していたのだろう。知らんけど。


「君ぃ。この『ガラス張り』は、一体、何の意味があるのかねぇ?」

 相変わらずコンクリートの壁が続いている。三面共だ。それを肩を竦め、親指で示す石井中佐の表情が変わるまで、あと三秒。二秒。

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