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海底パイプライン(二百十七)

 黒田と黒井が戦わせている『大和が沈んだ経緯』について、他の隊員は誰一人、何らの興味を示したりはしていなかった。

 何故なら、現に目の前で堂々と航行している大和を見て、沈む・沈まないの『仮定の話』など、今何の意味があろうか。


「沖縄で戦ってんなら、空母からでも陸地からでも味方が来るだろ」

「いやもう劣勢で、航空機の支援が無かったんですぅ」「はぁあ?」

 やはり『違う歴史』を考察するにあたり、現代の知識が些か邪魔になることもあるようで。黒田は陸軍出身ではあるが、黒井の説明がイマイチ『ピン』と来ない。勿論、理屈では解っていても、気持ちの何処かで『それを拒否している』のかもしれないが。

 仮に『航空機三百機で沈められる』として、今手持ちの航空機は『ヘリ一機』である。その一機が遠くに『大和の姿』を拝んだだけで、尻尾を巻いて逃げ出した記憶もまだ新しい。加えてマジもんの『主砲の一斉射撃』まで目にしてしまっては、今後はレーダーに『タンカー』が映っても、大和と誤認して逃げ出しそうだ。


『煩いなぁ。いつまでくっちゃべってんだ?』『そんな攻撃、どだい無理だべよぉ』『何でそんなに航空機側が有利なのさぁ』

 とまぁ一同口には出さないが、表情には良く表れている。

 黒井の説明自体は、どうやら一応『耳』には届いているようだ。

 全員が軍人なら、黒井の話から『戦況』も想像出来よう。それにしても、黒井が話している『大和のスペック』と、近代化改修後の『大和のスペック』には、雲泥の差がある事実に気が付く者はいない。だから余計に『現実味がない議論』が、続いている訳なのだ。


「あっ、これ『駆逐艦』ですか? 近付いて来ましたね」

 黒井も画面を見ながら『この辺に魚雷が当たった』とか説明していたのだが、そこに吉野財閥自衛隊の警備艇『島風』が映り込んだ。

 がなりたてられた『日本語』は、映像が波間に沈んだ瞬間、音が途切れるので、何を言っているのかは判らない。


「おっ、これも見て判るの?」「いやぁ? 判りませんよ」「何だ」

 黒井だって『艦影』を見て『艦名を当てる』技術は備えている。

 しかし『駆逐艦の艦名』までは覚えていなかった。後悔もないが。


「色も装備も、何か違いますねぇ? 何処の部隊ですかぁ?」

 小さな画面に群がる隊員を押し退けて、黒井がグイッと前に出て画面を凝視する。一応『階級が上』の黒井に遠慮して『どうぞ』の姿勢を示した。しかし何故か『冷ややかな眼差し』だ。


「お前知らないの?」「えぇ。何か『説明』受けましたっけ?」

 実は黒井が『別の世界から来た』と知る者は黒田一人だ。

 だから『大和がどうのこうの』とか言っている割に、『吉野財閥自衛隊』も知らない黒井に、一同『この人大丈夫?』なのである。


「吉野財閥自衛隊だよ。『お前の自衛隊』とは違う奴だ」「あぁ」

 黒田の口から出た『自衛隊』に一瞬反応した黒井だが、念を押されて頷く。その様子に一同納得だ。きっと黒井は、吉野財閥以外の『財閥自衛隊出身者』なのだと。

 きっと黒田が『スカウトして来た』のだろう。アメリカのヘリを操縦出来る辺り、多分『そっち系』の財閥出身者だ。


「奴らはこの辺にある『海底パイプライン』を警備していてなぁ、潜水艦まで保有しているって噂だ」「民間がねぇ? そんなの有りなんですかぁ?」「あぁ。今度は『そっち』を強襲しに行こうな!」

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