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海底パイプライン(二百九)

 今日は七月七日なのか? うん。そうなのか。月一のギャグ。

 来るべき十月七日は「今日は七日火曜?」と、何と曜日も合わせてギャグに出来る貴重な日だ。所で『七夕』って、いつだっけ?


『次弾装填っ! 急げっ!』『艦長っ! 中止ですってっ!』

 冗談にしては面白く無い。あろうことか、無線機から聞こえて来たのは多分『第三撃』という名の『大惨劇』だ。着弾点で聞いている誰もが固まっていた。勿論、下命した石井中佐本人をも含めて。


『……(ガヤガヤ)……』『……(早くしろっ!)……』

 大和艦橋各員の声が微かに聞こえ続けていた。所々ハッキリ聞こえる単語もあるが、遠い席からの声は良く聞こえない。

 自然と石井中佐が持つ『マイク』に顔が集まって来る。

 まぁ別に『顔』じゃなくても良いのだが。寧ろ耳が、もし『指先』に付いていたならば、腕を伸ばして聞くだけの話だ。


『……艦長? 艦長っ!』『何だっ! 次弾発射後にしろっ!』

 突然の呼び掛け。向こうの無線係の声だ。一番近いので明瞭に聞こえた。しかしそれ以上に、艦長の声がデカいではないか。

 着弾点に控える一同は『ギョッ』となって、近くなった顔を見合わせる。この際『敵味方』関係なくだ。


「答えんかっ!」「そうだっ! 中止だ中止っ!」「中佐っ! ボタンを押してっ!」「これか? 俺が押してやるっ!」「こらヤメロッ! 命令するのはこの私だっ!」「引っ張らないで、あぁっ」「うるせぇっテメェの命令、艦長全然聞いてねぇじゃねぇかっ! 艦長ぉぉっ!」「あぁ、合言葉も暗号も知らん奴は引っ込めっ!」

 大混乱である。小さなマイクを巡って大の大人が揉み合うとは。

 その内にお約束通り、無線機からマイクが『プツン』と引っこ抜けてしまったではないか。

 それでも、マイクを何とか死守した石井中佐はしたり顔だ。


「大和艦長の片桐大佐っ! こちらは司令官の石井である。あぁ、直ちに艦砲射撃を中止せよっ! 直ちにだっ! ドォォゾォォッ!」

 悔しがる若頭を見つめながら『ドヤ顔』である。フンと鼻息まで。

 しかし無言でパタパタしている無線係に気が付き、ドヤ顔のまま眺むる。すると無線係が無言で『コード抜けてます』と合図しているのが見えた。石井中佐は眉毛をピクリとさせたものの、冷静に垂れ下がった『コードの先』を指で追う。

 そして思いっきり『どうぞ』と言ったからだろう。まだプラプラと揺れている『ジャック』に辿り着くと、無線係の顔を見る。


『ココ ニ イレテ クダサイ……』『コレヲ?』『ソウデス』

 何となく『片言』で会話しているように見える二人を、若頭と取り巻きが交互に見つめていた。すると石井中佐が『知ってた』感を醸し出しながら、ゆるりとジャックを差し込んだではないか。


『……どうしよう。何とか誤魔化せるぅ?』『いやいや艦長ぉ、もう撃っちゃったじゃないですかぁ』(ザピー)『今更『危ないですよ』って言ったって、遅いと思いますけどぉ』『いやぁ……』

 石井中佐に突っ込みを入れる者は誰もいなかった。差し込んだことで、大和艦橋からの『悩める音声』が聞こえて来たからだ。

 声の調子から、艦長と副長と、後は向こうの無線係であろうか。


『じゃぁ、このまましれっと『撃ってなかった』ってことにしよう』

『向うに何て伝えますぅ?』『あぁ『了解』ってだけ言って切れっ』

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